記念リクエスト
□たとえば僕が…
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「晋助〜、銀さんと遊ばねぇー?」
「無理。今日、金時に会うんだ」
「えー、兄貴にぃ?!俺とも遊んでよ!」
「駄目…金時が待って………んだよその面」
「別に…」
そうか、じゃあな。と高杉は銀時に別れを告げた。銀時は、頬を膨らませ兄である金時を恨んだ。
兄貴の野郎ぉぉおぉ!
俺の晋助を奪いやがってぇ。
そりゃ、いつも一諸にいたくせに告白しなかった俺もどうかしてるけどよ…。
なんか…奪われた気分。
「……帰るか」
ハァッと大きな溜め息を付いて、高杉が行った道の逆方向に足を運ばせたのだった。
道に転がっている石をけり飛ばし、ブツブツ言っているが頭は違う心配事を思っていた。
晋助が幸せならそれでいい…。
そこまでして、壊そうとは思わない。
仲が崩れるのもヤダだし怖い。だけど……、
君の笑顔をアイツが壊してしまいそうで…、
俺は…そっちの方がよっぽど怖い―…。
†たとえば僕が…†
「じゃあな」
「気をつけて帰って下さいね、銀さん」
「悪いな、いきなり来て」
「僕も暇だったんで良いですよ。この通り、土方さんたちもまだいるし」
玄関まで見送りにきた新八が、散らばっている靴を指差して苦笑した。それにつられ銀時も苦笑。
銀時は、高杉に遊びを断られて何となく帰りたくなくて新八の家に行ったのだった。行けば、土方に沖田がいて定番の神楽もいた。
「銀さんも食べて帰ったらいいのに」
「その気持ちだけ受け取っとくよ。じゃ、また明日な!」
「はい!」
新八と別れを告げ、銀時は夜の道を歩いて行った。人があまり通らない夜道。不気味な程、静かである。
銀時の両親は、海外の方に転勤となった為、銀時は一人暮らしをしている。銀時には、兄がいる。坂田金時。ホストで働いている。
そして、高杉の恋人だ。最近は、会っていない、と思っていると、前方から足音が聞こえた。
道なのだから人が歩いてくるのは当たり前だ。しかし、前方からやってくる足音はやけに悲しく響いていた。
「……ぁ」
「……し…晋ちゃん」
前方からやって来たのは、同じ学部でクラスメートの高杉だ。なんべんも言うが、銀時の想い人だ。
「何で?兄貴と一緒じゃなかったの?」
「……いつまでも一緒にいる訳ねぇだろ」
「そっか。…なら、帰り中って訳だ」
「………飲みに行かねぇか?」
「……へ?」
銀時は、目を見開き高杉を見つめる。
嬉しいのだが…何か引っ掛かる気がしてならなかったのだった。
「行くのか?行かねぇのか?どっちなん、」
「勿論!!行きますとも!」
「声でけぇよ、馬鹿」
高杉はフンワリと笑う。
銀時はその表情が、好きなのだ。
幼い子供のようで、可愛げのある表情が。
「じゃ、行こうぜ」
「おう!」
銀時は、踵を返し高杉と共に居酒屋に向かったのだった。
いつもなら、兄貴がホストない日に会うんだけどなぁ…急遽、仕事が入ったのか?
「兄貴、仕事入ったの?」
「あぁ。"えー、せっかく晋ちゃんとラブラブしてたのにぃい、死ねよヅラぁ!"つってた」
「…兄貴の真似すんなよ、キャラ壊れてっぞ」
「うるせぇな、天パァ。詳しく説明してやったんだろうが。有り難く思え」
「へぇへぇ、蟻が十匹ありがとう」
「…………」
「うん、黙らないで。そうゆうの一番傷付く。ツッコムんならツッコミ入れて」
プッと息を噴出し、古いんだよ、と苦笑した。
銀時もそれにつられて笑ったのだった。
「誤解すんなよ!!今日断ったの悪かったと思ったから誘ったまでだ!」
「なら、携帯で知らせろよな」
「携帯忘れたんだよ!クルクル天然パーマ!」
「酷っ、そこまで言うかな!?あーあ、銀さん千のダメージ食らったぁ!」
「千ならHPなくなったな…アバヨ、天パァ」
「うん…目から大量の汗が流れ出た」
ククッと喉をならしながら笑う高杉に、銀時は見られぬよう俯いて笑うしかなかった。
見せられる訳がない…薄く頬を赤く染めた顔など。
好きだ…。
誰よりも晋助が好き。
その恋が…叶わないからこそ、この幸せを喜んだって良いだろ?
「銀時……夜遅くなるかもしれねぇが、俺に付き合えよ?」
「いやん!晋ちゃんに告白されちゃったぁあvV」
「……」
「(ハッ…ヤバ。調子に乗り過ぎた。来るか、晋助の強烈パンチ!)」
バッと無意味なガードをつくったものの高杉の強烈パンチがやってこない。
おかしいな、と瞑った瞼を開けると高杉は微笑んでいた。そして、殴られると思っただろう。と笑い、銀時の返事を待っていた。
当たり前に、銀時の答えはOKの二文字だ。
「いいよ、久し振りに飲むんだからさ」
「…さんきゅ」
そう言った途端、目的地につき銀時と高杉は居酒屋に入っていったのだった。
入るなり、いつもの年寄り店主がいた。
「らっしゃい…おぉ、晋ちゃんに、…お!銀さんじゃないかい。久し振りじゃのう」
「よ、おっちゃん!お久ッ。元気で何よりだ」
「おい、おっさん。銀時は銀さんで何で俺だけ、晋ちゃんなんだよ?やめろっつっただろ」
「何でって…」
「そりゃあ、…なぁ、おっちゃん」
チラリと銀時が店主を見ると、コクッと頷いた。晋助は、その二人を見て首を傾げた。
「……??」
「「幼くみえるから…」」
「シメテヤル…」
そう言う高杉を抑えて、二人は奥の席で飲み始めたのだった。生ビールに、日本酒などなど、その他諸々飲んだ。
勿論、酒にあう揚げ物やらも頬張っている。
銀時は、見た目に寄らず酒には強くあまり酔わない。だが、高杉は見た目で酒に強く思えるがそうではない。その逆だ。
晋助の奴…さっきからガバガバ飲んでっけど大丈夫かな。心配なんですけど。
「し、晋助。大丈夫か?そんなに飲んで」
「大丈夫、だ!オラ、注いでやっから飲むぞ、銀」
「お…おぅ」
絶対ぇ、潰れっぞコイツ。
既に顔赤いし、目なんて潤んでる。
まぁ、可愛いから良いけどねっ!
高杉に酒を注いでもらい、二回目の乾杯をした。カチンッとコップとコップがぶつかりあう音がやけに店に響いた気がした。
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