記念リクエスト
□溺れたい
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「……旅行?」
『そう、そう♪辰馬が宇宙旅行にでもどうかってよ!勿論…』
「行かない…」
『だよねぇ〜……って行かないの?!』
「行くかッ!!俺ぁ、暇じゃねぇんだよ!」
『えー!行こーよぉお!!』
「あーあー、聞こえねぇよ。電話の調子が悪ぃみてぇ、じゃ切るな」
『あ…待ッ、…』
高杉は、銀時の声を遮り、ガシャンっと凄まじい音を立て受話器を置いたのだった。
フゥッと息を吐きポリポリと頭を掻いた。
たく…、散々俺の計画を邪魔しやがった挙げ句には旅行だぁ?こっちは、てめぇ等のせいで新たな計画立ててるんだよ。
ブツブツと愚痴を吐いていると、喉を潤したい感情になり仕方なく水でも飲みに高杉は立ち上がった。
襖に手をやり、可愛らしい欠伸をしながら一歩を踏み出そうとした時、ボフッと何かにぶつかったのだった。
何だと見上げると、高杉は固まってしまった
「こうなると思って、あらかじめ、この隠れ家にいましたー…テヘ☆」
「「…テヘ☆」」
……いやいや。キモいから。
つうか、テヘ☆…っじゃなくてよ…、
「何で此所が分かったんだぁぁあ!!?」
馬鹿三人が立っていた―…
†溺れたい†
「たぁかぁすぅぎぃ、んな怒んなってぇ」
鬼兵隊、隠れ家に来た三人…銀時、桂、坂本はかつて攘夷戦争に参加した戦友である。
彼等は、嫌がる高杉を連れてターミナルにいるのだ。桂は指名手配人。勿論、高杉もだ。
桂はヅラ子となり、高杉は桂によって女装されそうになったが、高杉が絶対嫌だ、と抵抗する為、笠を深く被らせたのだった。
勿論、高杉は不機嫌maxだ。
「五月蠅い、話かけんな。今てめぇ等を殴りたい気持ちを抑え込んでんだからよ…」
「いやいやいや…もう既に殴ってんじゃん。初頭から殴って来たじゃん。三人共、未だ頭から血流してっから!」
「そうだぞ!貴様は何でもかんでも手が先に出るのが昔からの悪い癖だ!」
「暴力反対ぜよー、晋」
「今すぐ黙らねぇとなぎ倒す」
「「「………」」」
無理矢理連れて来られた挙げ句、刀を隠れ家に仕舞い込まれ今は丸腰だ。
しかし、高杉は刀がなくとも殺気だけで黙らす事が出来るらしい。
三人共、すぐさま片手を口にやりチャックを閉じるような仕草をとったのだった。
「オラ、前に進めや」
「え?」
「え、じゃねぇだろ。人をここまで並ばせておいて引き返せっかよ。仕方ねぇから行く」
「やった!晋ちゃん大好き」
「だ、抱き付くな!」
ガバッと銀時は高杉に抱き付いた。周りから見れば、ただのカップルがイチャついているようにしか見えない。高杉の顔は、笠で隠れていて女性のように見える。
「ラブラブじゃき」
「ラブラブだな。目が腐るほど」
「「(…羨ましい)」」
桂と坂本はイチャつく二人を見つめていた。
まあ、なんとか四人は船に乗り込み、宇宙旅行へ出発したのだった。
銀時の隣りには高杉、高杉の隣りには坂本が座り、前には桂が腕を組んで向き合って座っている。
何故、宇宙旅行に行く事になった理由は、久し振りに地球に帰って来た坂本の言葉からだった。
『四人で昔のように酒飲みたいぜよ』
これだけだ。本当にこれだけなのだ。
そんなの無理に決まってんだろ、と言いたげな表情をする銀時と桂に、坂本はうーんと考え、閃いたのかニヤリと笑った。
"儂が今回ある豪華宇宙旅行に連れてってやるぜよ"と言えば、その話に食らい着いたのだった。なんとも単純な二人であった。
「部屋は俺と高杉、桂と坂本で分けてあるから」
「……当たり前だろ」
「え…」
「お前と一緒じゃなきゃ、やだ」
「………なっ///」
「…って思うか、自惚れるなよくそ天パァ!」
「……っ」
言った後に顔赤くさせるのって、反則だろ。
ちょっ、何その「言うんじゃなかった」っつー仕草ッ!?めっさ可愛いんですけどぉおぉ!
これだ!!彼氏を萌え死ににさせる第一位『ツンデレ』
銀時がデレデレする一方、桂は頭を抱え、坂本は高杉の頬をつんつん突いている。
高杉は片目で目元を覆い、恥ずかしさに耐え、されるがままだ。
久し振りに銀時に会ったし…つい本音が。
だが…このメンツの方が久し振りだな。
坂本もヅラも元気みてぇだし。
進む「道」が違っても、この関係はなくなって欲しくない…出来る事なら、ずっと。
高杉は未だ頬をつついてくる坂本を払いのけ、銀時に寄り添った。
銀時が、高杉を見ると眠たいのか、それとも甘えたいのか分からないが優しく笑い、銀時も高杉に寄り添ったのだった。
そのうち、うとうとしてきた銀時と高杉は夢の中へと入っていった。
「全くコヤツ等は、宇宙の素晴らしさを見る前に眠りおって!」
「儂等が代わりに見といてやれば良いぜよ」
それもそうだな、と桂は言い自分が羽織っていたモノを銀時にかけ、坂本は高杉にかけてやった。仮ママ・パパの役目と言うやつだ。
「十分に見たら、号室に向かおう」
「そうじゃな。んで、儂等の部屋で酒じゃあ!それに、この宇宙船の号室は広いぜよ!」
「ほぅ、楽しみだな」
桂は瞼を閉じ笑った。
坂本もつられて笑った。しかも、声を上げてだ。高杉が身を捩ろいだのを見て、桂は急いで坂本の口を抑えた。
全くと溜め息を付き、身を捩ったせいで羽織りがずれ、桂は掛け直したのだった。
「嬉しいものだな…」
「なにがじゃ?」
「高杉が俺たちと一緒にいる事を許している事、にだ。立場としたら敵の筈なのにな」
「じゃが、嬉しいのは確かぜよ。晋も敵だと分かっておっても敵とは見られないんじゃ。儂等と同じぜよ〜」
「…そうだと良いな」
そう言うと、桂は窓一面に広がる宇宙を見つめ、坂本も見たのだった。
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