記念リクエスト
□誓いを交わした口づけ
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「はぁ…ッはぁ……っ」
なんだ、この状況は…?
誰か説明してくれ!
†誓いを交わした口づけ†
数分前の事であった…。
高杉は片目を奪われたという重傷の為、桂たちにゆっくりしていろと釘付けされたのだ。
確かに、足手纏いになってしまうと思った高杉は、大人しく廃寺で休んでいる事にした。
「……くそっ」
ダンッと畳を殴り付ける。
その一つの行動に息が上がってしまう事に更に苛立ちが募る。
あいつ等は命掛けで刀を振い戦ってるっつーのに…俺は少し動けるものの戦う事すら出来ないなんて…。
もどかしくて堪らない…。
「……?」
そんな事を思っていると、高杉は何か物音らしき音を耳にとらえた。
廃寺には高杉一人のはずだ。高杉は、天人かと舌打ちをし軋む体をゆっくり起こした。
隣りにあった刀に手をやり、本当に音がしたのかを耳を集中させ最終確認を行う。
ギシ…ギシ…っと音がする。此所、廃寺は相当古く、歩く度床がギシッと鳴るのだ。
やっぱり…誰かいる。天人か…?
それとも、俺以外に怪我した奴がいたか…?
いや…そんな奴はいなかった。
俺だけのはずだ。
変な汗が頬や背中に伝う。
天人だとしたら、いくら刀が側にあっても重傷の高杉には、抵抗すらできない。
どうしたら良いか、と答えを探す。しかし、答えは出てきやしない。
「―……ッ」
ギシリッと床が唸り、高杉がいる部屋の障子に影が映る。その影は人の形をしており、天人ではないのは確かである。
人だからといって安心する訳にはいかない。
時々天人という者は、人間の皮を被っている時があるのだ。開くなっと願っているのに、その願いを嘲笑うかのようにスーッと障子つきの襖が開いた。
「「…………」」
流れる沈黙…。
高杉の目の前に立っているのは、戦場に行ったはずの男。銀髪の髪を持つ男―…。
「…………ぎ、ん…とき」
なんで此所にいる?
お前は確かに俺が見送った筈だ。
優しい笑みを向け、ちょっくら行ってくる、と仲間と共に行った筈…。
しかし、高杉はある事に気が付いた。
銀時は、着物を着て刀を持っていた。何より眼鏡などかけてはいないし、見慣れない服を着てはいない。それに、気のせいだろうか。
高杉を目の前にした男の表情が険しくなり、冷たい瞳で高杉をとらえる。
「……銀、時?」
「……そいつの名前を呼ぶな」
「……え」
なんともいえない冷めた音色に空気が固まるのを高杉は感じた。そして、目の前の男がゆっくりと高杉に近付き、手を伸ばす。
逃げろ、逃げろ、と警報音が鳴り響く。
―……こいつ、銀時じゃない!
そう分かると高杉は、枕を投げ付け軋む体を無理矢理動かし、部屋から飛び出た。
捕まったら確実にヤバいと察したからだ。一人残された男は口元を吊り上げ部屋を出たのだった。
「…逃がさねぇよ」
獣のような鋭い瞳をし、銀時もゆっくり歩きだしたのだった。そして、今に至る。
高杉は、息を切らしながらも廃寺中を走り回っている。何をどうしたら良いのか分からないのだ。
「はぁ…はぁ…っ」
高杉は、荒い息がおさまらず怪我した傷を手当てしていた所からは血が流れ出ていた。
人の気配がない今、高杉は襖に寄り掛かり息を整える。
なんつー目ぇしてやがんだ、アイツ。
殺気と狂気に満ちた瞳だった…。
銀時そっくりで…銀時ではない。
…意味分からねぇッ!つうか、んだよあの変な服は!?どこの人間だよ?!
ふと高杉は、ある事に気付いたのだった。
先程、あの男が言った言葉である。
『……そいつの名前を呼ぶな』
奴は……銀時を知ってる?
だが、銀時に兄弟なんざ居たか?
いる訳ねぇ…銀時は兄弟がいると一言も言っていない。
「―……ッ?!」
そう考えていた瞬間、再び空気が固まったのを感じた。嫌な予感がしたが、時既に遅し。
高杉は、襖を閉めずにいた為その隙間から手が現われたのだった。
その手は高杉の口元を覆い高杉を捕らえた。
「……ッ」
「…つーかまーえた」
横目で横を見ると、ニンマリと笑う銀髪の男がいた。その男はゆっくりと部屋の中へ入り、高杉の目の前に立つ。
口を未だ塞がれている高杉は、罵声の代わりに男を睨み付ける。
「あー、怖い、怖い。そんな目で見んなよ。つうか、逃げる事ないじゃん。先生傷つくなぁ」
「………」
先生?!お前が先生なわけあるか!
笑ってる癖に目は笑ってねぇぞ。
痛む怪我を耐え、高杉は男の腹を思い切り蹴った。男は一瞬、顔を歪めその場にしゃがみ込んだのだった。
その間に、高杉はこの部屋から出ようとしたがバランスを崩し畳の上に転んだ。
「………ッあ!」
「…おいたが過ぎるんじゃねぇの?高杉ぃ」
高杉が転んだ理由、それは男が高杉の右足首を掴んだからだ。それにも驚いたが、高杉が一番驚いたのは男の発言である。
何故、見知らぬ奴が自分の名前を知っているのか、不思議で堪らなかったのだ。
しかし、それどころではない。捕まってしまった高杉は、血の気が引くのを感じた。
「こちらに来なさいな。高杉くん」
「……ッひ」
振りほどこうと暴れるが、その抵抗は虚しくどんどん男の元へと引き摺られていく。
バタバタと暴れる高杉の腰に男はドカッと跨がり、両手を頭の横に縫いつけて、畳に高杉の上体を押しつけた。
いきなりの事態に涙を溜めた目は、男からしたらどれだけの凶器になるかも分からないのだろうか。
「な…なんのつもりだ!てめぇ」
「コラ、先生に向かってなんつー言い方だよ」
「お前が教師な訳……ッ!」
バキッと鈍くて痛々しい男が響く。
その途端、ジワジワと痛みが訪れ、口一杯に鉄の味が広がり、殴られたのだと気付いた。
「大人しくしろよ…高杉。出来るだけ痛くしねぇから」
「…ぇ?……ぁ、やッ!」
着流しの割れ目を掴むと、男は左右に思い切り開いた。胸元は晒されてしまったのだった
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