記念リクエスト

□輝く場所
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真っ暗だ…。何が真っ暗?
外が真っ暗…暗闇が果てしなく続いてる。
いや、違う…外だけじゃない。
俺の心も真っ暗なんだ…。




「……」




夜の歌舞伎町はネオンの光に包まれている。その光に包まれた町でも隅っこは汚い暗い外路地がある。
その中に、一人の青年が身を小さくして座っていた。所々汚れている格好で、ネオンによって光る町を睨むその瞳の奥は哀が含まれていた。




いっそこのまま死んでしまおうか?
どうせ帰る所なんてないし…。




「君が、高杉晋助くん…だよね?」




見上げると人が一人立っていた。
気配に気付かなかった自分に驚きながらも、見上げた。すると、目に入ってきた物は銀髪。その髪が光に照らされて眩しく目を細めた。




「探したよ」




男はそう言うと俺の腕をとり、引き寄せた。
その途端、意識が途切れた…。












†輝く場所†












「……」




目が覚めると真っ白とは言わない天井が目に映った。二日振りに布団で寝れたからか、体が軽い。
何より、グッスリ寝れた気がするのだ。




何処だ…此所は?
あの後、俺はどうしたんだ?




そんな事を考えていると、襖を見て無意識に晋助は襖に手を伸ばし襖を開けたのだった。
光が広がり少し目を細める。




「おはよ〜。体の具合はどう?」

「……ぇ、あ…大丈夫、です」

「そっか。風呂、入っておいで」

「……ぇ、でも」

「いーから、いーから…ホラ」

「ぇ……ぁ、あの」




晋助は断る仕草をとるが、確かにここ二日風呂入っていないからか気持ち悪いのだ。
銀髪の男に風呂場に連れて来られ、着替えとかは後持って行くからごゆっくり。っと言われドアを閉められたのだった。




…赤の他人なのに。
どうして…?




疑問を抱えながらも晋助は風呂に入った。
丁度良い温度であって、少しの時間だけ自分の立ち場など忘れていた。
銀髪の男に言われた通りゆったりしていると気付けば、長風呂であった。湯船から上がると用意されていた服を着てバスルームから出たのだった。




「よー、気持ち良かったか?」

「…あ、はい」

「んじゃ、話があっからそんなとこに突っ立ってないでソファに座って」

「……はい」

「新八、茶頼む」

「分かりました」




横を見ると先程までいなかった眼鏡の少年が立っていた。その少年は、晋助を気にしながらも台所の方へ駆け寄って行った。
銀髪の彼に言われた通りソファに座ると、新八にお茶を差し出された。礼を言いお茶を注がれたコップを受け取ったのだった。




「神楽ー。おめぇ等も来い」

「はいヨ〜」

「……」




別の部屋、いや押し入れから少女が出て来た。二人は銀髪の彼を挟むように座った。
目の前にいる、三人を晋助は不安気に見つめていた。左から眼鏡少年、銀髪の男、オレンジ髪の少女だ。




「先ず自己紹介からな。俺は、坂田銀時」

「僕は、志村新八です」

「私は、神楽アル」

「ぇ、あ…俺は、高杉晋助です」




そう言うと、二人は驚いた目をした。
そこで、晋助はハッと気付いたのだった。




「…えっと…あの、俺、」

「ヒャッホ〜イ!一人仲間が増えたアル!」

「うわぁッ…!!?」




立ち上がり家から出ようとする晋助に神楽が抱き付いた。
抱き付かれた晋助はびっくり。見上げてくる神楽を晋助は見下ろすと瞳を輝かせ見つめていた。
晋助は困った表情で新八を見、近くにいる銀時を見た。銀時も晋助に近付き、頭を撫でた。




「歓迎されてんだよ」

「…で、でも」

「僕等は、高杉さんを嫌がりませんよ」

「そうネ!嫌がる理由なんて何処にもないヨ」

「俺は…犯罪者の―…」

「それが何ヨ?過ぎた事アル。気にしないで良いアルよ」

「……」




銀時は、神楽に放れるよう告げた。神楽も満足したのか素直に離れたのだった。
隣りにいる銀時を、晋助は未だ不安な瞳で見つめていた。




何なのだろうか…この人たちは。
どうして、意図も簡単に俺を引き入れる?




犯罪者、の息子。
そう晋助の父親は、犯罪を犯したために警察に捕まったのだ。父親が犯した行為…。
それは、人の命を殺めた事。その者に対し頭に血がのぼり、殺ってしまったらしい。
父親が殺めた人物は、彼の弟だという。




「…なんで、俺を助け、たんですか?」

「……」

「俺なんて、ほっとけば良いものを…」

「逆に何でそう思う?」




その事を聞いた銀時は、黙り込んだ晋助を見つめる。晋助は、銀時たちではなく机を目に映していた。




「教えてくれねぇかな?」

「……」




晋助は、奥歯を噛み締め、固く口を閉じていたがゆっくりと重たい口を開けたのだった。




「今までは、学生として暮らしてました。ですが、ある日学校へ行こうと号室から出たら」

















『……っ?!』

『高杉さん、父親・悠介さんが起こした今回の事件に何か気掛かりな事はありますか』

『悠介さんと弟さんは普段どんな関係だったんですか?』




ガヤガヤと目の前は報道陣に囲まれたのだ。
晋助は意味が分からなかった。テレビなど付けていないせいか昨日の出来事を知らない。




『この事件の原因に何か心当たりありますか?』

『何だよアンタたち!…退いてください』




そう言うと晋助は報道陣を割りながらも取り敢えずマンションから出たのだった。
出たら出たでカメラのフラッシュを浴び下にいた報道陣が近寄って来る。
そして、近所の人や通り人、学生たちの目が晋助に注がれる。




なんだ?…どうして?俺が何かしたのか?
意味が分からない。事件ってなんだよ。




『教えて下さい!悠介さんと弟・慎司さんはどのような仲だったんですか?』

『父と叔父さんがどんな仲だなんて知らない!そんなの二人に聞けばいいじゃな、』

『昨日の事件知ってるんですか?』

『知らねぇよ!…退いて下さい!』




ドンッと勢い良く押し再び報道陣を割っていく。晋助は、一刻も早く離れたかったのだ。
学校まで走る。それを情報を得るため、報道陣たちが追いかけるのだった。
息が切れ始め、だんだん苦しくなる。それは報道陣たちも同じはずなのだが、一向に諦める色が出ない。




『…っち。何でこうなんだよ!』




学校の門には主任が立っていた。
どうやら、遅刻しそうな生徒たちを急かすために立っているのだろう。
その主任が高杉に気付くと顔色を変えた。助けを求めていた晋助には嫌いな教師たちでも良かった。…だが、




『高杉!お前は、学校が良いと言うまで自宅で謹慎処分だ!』

『……ッ!?』

『殺人魔の息子が来てもらうと困る!学校まで報道陣を張られるなんて御免だ!』

『…さつ、じん………ま?』




足を止め、冷ややかな瞳で見てくる教師たちを見る。それを聞いて数秒経つと晋助は心臓が高鳴った。
昨日の事件。全て意味が分かった。父親が…人を、つまり弟を殺めたのだと。




『高杉さん、待って下さい』

『………くそッ』




晋助は後ろから追って来る報道陣が近くに来た為、そう吐き捨てると違う方向に走り出したのだった。




なんでだ…なんでだよ?!
教師なら生徒を匿うのが普通じゃないのか!?たかが報道陣ごときで―…




『―……』




はぁはぁ、と路地裏に隠れ、壁に寄り添って座った。乱れた息を整え、パニック状態に陥っていた頭も元に戻り始めていた。
冷静を取り戻した晋助は、人にあまり見られず歩きマンションへと戻った。
報道陣も時間よくいなかったのですぐ号室の中へ入れた。テレビを付けると丁度、父親が犯してしまったニュースをしていた。




『ここは高杉悠介容疑者が暮らしているマンションです』

『……』

『昨夜、弟の慎司さんとその妻・文さんを刃物で胸などを刺し殺害した模様です』




暫く晋助は、その場に立ち尽くしテレビに釘付けになったのだった。
晋助の父親、悠介は仕事熱心で優秀な人物であった。晋助は、その後ろ姿が好きだった。
仕事仕事で小さい頃から相手されず、母親まで早く亡くし孤独に暮らしていた晋助は、悠介の事が大嫌いであった。
しかし、家で夜遅くまで仕事に取り組む悠介の後ろ姿が大好きだった。




『高杉容疑者は、未だ黙ったままで事件の起こった行方は不明です』

『……』

『自宅を訪れると息子さんの晋助さんが、』




先程の報道陣たちに囲まれていた己をテレビで見た晋助は、リモコンを取るとテレビの電源を切った。
そのまま、フラフラと歩きベッドの上に倒れ込んだのだった。今まで流れたニュースが頭の中で繰り返し再生されている。
悠介が人を殺めたのは真実のはずなのに、晋助は何故だか信じられなかったのだった。




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