長編

□第1話
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―…ガシャーンッ!!!





けたたましい音が屋敷の廊下に鳴り響いた。
その屋敷に雇っている護衛たちが、何事だ?!と騒いでいる。
その護衛たちの中で一人、唯一の責任者が、俺が行く。と告げ凄まじい音がした部屋へ向かった。




「…また、やったのですか?晋助様」

「…ハァ…ハァ、ッ」




部屋に入ると壁は所々凹んであり、色々なものを投げつけ床にはそれらが散らばっている。
そして、最後に聞こえたあの音はどうやら、飾っていた花瓶のようだ。一面に広がった水と花…そして花瓶の残骸。




「晋助様…どうなされたのです?」




ベッドの上で膝を折って両手で抱え込んで座っている少年に話をかけた。その右手からは、壁を殴ってしまったせいか血が流れている。
責任者である人物は、少年に近寄り、ギシリッと音を立てて、彼の側に座った。




「……またあの夢、を見たのかい?」

「…かず、ま…俺…ッ」




体を震わせ、今にも泣きそうな顔で、"一馬"と呼ばれる護衛を見た。唯一の責任者・一馬は少年を引き寄せ優しく包み込んだ。




「大丈夫。俺が貴方を命に代えて守り、貴方の側にいます。それが…俺の護衛である役目ですから」










第1話










「席つけコノヤロー。チャイムは既になってんぞ」




ガラッと教室のドアを開けたのは今年の4月から3Zの担任をもつ事になった、坂田銀八である。
桜はとうに全て散り、綺麗な色をした緑の葉となり風に揺らされいた。




「先生こそ何してたんですか?遅かったですけど」

「俺はアレだ…パフェと格闘してた」

「……はあ!?教師が朝っぱらから何食ってんすか?!」

「うるせぇなぁ…銀さん糖分切れっとやる気なくなるんだよ!!プー太郎になんだよ!!」




意味分かんないから!!っとツッコミ担当・新八が銀八に叫ぶ。銀八は、あーっと両耳を抑え、新八の声をかき消す。
すると、ガラリっとドアが開いた。
皆の視線がそちらに注がれる。そこには、我が銀魂学園の制服を着た少年が立っているではないか。




「……」




……あれ?
この子…誰だっけ?




銀八は、口をポカーンッと開けてそこにいる少年を見つめた。その少年もじーっと銀八を見つめていた。




何?なんなんだ??
銀さん見つめられると照れちゃう…訳ねぇだろぉがぁぁ!
何見てんだよー!
銀さんに何求めてんだっ!?




冷や汗を若干かきながら、銀八は目を泳がせる。
そんな時に、クラスがざわめき始めた。その表情には、何処か変わったモノを見ているかのようだった。
銀八は、ハッと気付きよくクラスを見渡した。すると、窓側の席が一つ空いていた。




「…もしかして、高杉くん?」

「…だとしたら?」




ニコッと笑う少年は、逆にその笑みが怖かった。
少年の名は、高杉晋助。有名な商品を考え、売っている大人気のブランドを造り出した高杉財閥の一人息子である。
銀八は、初めて見る高杉に冷や汗混じりで茫然としていた。高杉も、4月を過ぎ初めての登校だ。
クラスからの言い伝えだと、高杉は1・2年の時もあまり来なかったそうだ。
単位が足らずとも、進学できるのだ。なぜなら、あの有名な会社の息子とくれば歯がたたないらしく、学校全体は、逆らえば高杉財閥に学校を潰されてしまうのでは。と決まっていないのに恐れているからだ。




「で…?俺はあそこの席に座ればいいのか、先生?」

「…そうです」




ハハッと口端を引きつらせ銀八は、そう返事をした。高杉は、ふーんっと言い窓側の席へ歩いていった。
先程までの騒ぎがどこかへいき、生徒たちは高杉に視線を送った。高杉の珍しい登校に、隣同士でひそひそ話をしている生徒もいた。
銀八は、高杉の事は生徒からも教師からよく聞いていた。不良で問題児だと。
銀魂学園の校長であるハタは、彼が高杉財閥の息子で両親もさぞ可哀想に。と言う言葉に銀八は、お前もその顔で可哀想に。と聞き流していた。




アレが…問題児、ねぇ。




一向に静かにならないため、銀八は溜め息をつき、両手をパンパンッと叩いた。
その音に生徒たちは反応し、口を閉じて銀八を見た。




「やっと全員揃ったな。えっと高杉くん。俺は此処の担任の坂田銀八な。よろしくという事でこれから来ること!いいね?」

「……ふん」




高杉は、口端を吊り上げ鼻で笑い、そのあと、頬杖を付き窓ごしから景色を見つめ始めたのだった。
銀八が言い聞かせても一切、見向きもしなかったため、銀八は仕方なく教室を出ていった。
高杉はそれを横目で確認し、再び景色に視線を戻し窓から下の通路を見つめた。
暫くするとそこの通路に銀八が通りがかった。銀八は生徒に人気なのか何かしら周りに人がたかっている。




「……」




坂田銀八、か…。
…どんなに生徒に好かれてるか知らねぇけど、俺は周りの奴等とは違う。
友情とか信頼とか…そんなものクソくらえだ。




高杉は、目を逸らし視線を感じる中、小説を開き読み始めたのだった。









「……ふぅ」




放課後。一日はあっという間に過ぎ去り、生徒たちが下校している。その光景を銀八は、屋上で一服しながら見ていた。
綺麗な青空に、ふぅっと息を吐く。太陽が眩しく目を細める。銀八の脳裏には初めて会った生徒・高杉のこと。




予想していたより、華奢な体型だったな。
もっとごっつい体をしてる男かと思った。
あの体で喧嘩強いとか目ぇ疑うわ。




「にしても…」




もたれていたフェンスから離れ、タンクの所まで歩み寄った。梯子から上がり、タンクに背を預けて座った。
銀八はいつも此処で休んでいるのだ。銀八にとったら特等席といっても良いだろう。




- 君には苦労するクラスを指導してもらうよ -




校長の言葉が脳裏に浮かぶ。
実際にそのクラスに行ってみると多少、周りのクラスとはおかしな生徒が集まってはいた。
しかし、どの生徒も良い生徒ばかりで銀八には校長の言葉が理解できなかった。
この日がくるまでは…。




あのクラスの空気…。
高杉が現れた時の、生徒の反応。




「……なんとかしねぇとな」




ガシガシと頭を掻き、何回目かわからない溜め息をついたのだった。




…そういえば、右手怪我してたな。
喧嘩かなんかだろうが、痛々しいから止めなさい!!って言っても無理だろうしな。
なんたって、不良だし?




「あ゛ー。ホント面倒なクラスもったもんだな」




銀八は再び乱雑に頭を掻き、溜め息をついた。
煙草の火をコンクリートで擦り潰し、携帯用灰皿に入れて、グッと背を伸ばしたのだった。




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新連載始めました!!
頑張りますので、優しい目で見てやって下さい!←
題名は、友達が考えてくれましたvV(笑)

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