記念リクエスト

□何よりも、誰よりも…
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じとじと、べたべた……気持ち悪い。
吐き気がする。
今は何日?何時何分?何曜日?
…分からねぇ。
何も…分からねぇ。




「はっ。まだ考え込める余裕があるみたいだ、なっ」

「ん、ぁあっ!!…ぁ、やぁっ」




いきなり突き上げられ、高杉は現実に引き戻される。高杉相手に複数の侍たちが高杉を容赦無く抱く。そう、高杉はここ何日間侍たちに拉致されているのだ。
攘夷浪士で最も危険な男として恐れられている高杉が意図も簡単にそこらの侍に捕まるほど柔じゃない。しかし、ここにいる侍たちはそんな高杉を意図も簡単に捕まえてしまったのだ。




「おら、くわえろよ!」

「んぐっ!……んんっ、ぅ」




無理矢理口を開かされ、異物を突っ込まれる。
なんとも言えない吐き気に襲われると同時に口の中にある異物を噛み千切ってやりたい衝動に襲われる。してやりたいのは山々だ。だが、やってくる快楽には勝てなかった。




気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。
気持ち悪いはずなのに……。




気持ちいい。




無理矢理やられているにも関わらず感じてしまう己の体を高杉は非常に恨めしく思ったのだった。すると、次の瞬間口に苦みが広がり、顔には熱いものがかかった。
口から異物が無くなったからとはいえ、行為が終わった訳ではない。腰を捕まれ、激しく突かれる。高杉は、ただただ喘ぐしか選択肢がなかった。
手首には手錠をされ、抵抗できる訳がなく。抵抗できる口は最初だけで、出したくもない声が出るだけ。
悲鳴に近い声をあげ、高杉は達した。もはや、何回目なのかも分かりやしない。それと同時に中に出され、小さな声を漏らし肩で息をする。




「も…ゃめっ、せッ…、殺せ!!…殺し、てく……ぁああっ!」

「殺せって?馬鹿言わないでくれ」

「俺たちはお前さんを抱きたいんだよ。死ぬまで抱かれてな…鬼兵隊総督さん」

「ひゃ、ぁっ…ゃめ、ぅあぁあっ!」



いやだ…触るな。
汚い手で俺に触るなっ!
汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い。
汚いっ!!!!




「―………ぁ」




汚い、のは…俺か。
汚いんだ………俺。




生理的に流れる涙が頬に伝い、畳に落ちて地面に染みた。
まだまだ彼等の行為は終わらない―……。










†何よりも、誰よりも…










「起きろっつってんだよクソ天然パーマァァァアッ!!」

「…ぅぎゃあぁあぁぁっ!!?」




凄まじい音が万事屋全体に響き渡る。
神楽が寝ている銀時に躊躇なく突撃してきたのだ。鳩尾に近かった為か、腹を押さえて声にならない呻き声を出していた。時計を見るがそう寝すぎた時間でもない。むしろ、いつもより早い時間帯だ。
何すんだよ。と少々イライラ気味で神楽に言い、顔を見るが落ち着きのない表情であった。何があったのかあたふたしているのだ。




…なにかあったみてぇだな。
たく、もっと優しい起こし方とかなかったのかね。




そう思いながらも、立ち上がり神楽の頭をポンッと手を置き、すぐいくから行っとけ。と伝えると神楽は小さく頷き寝室から出て行った。銀時もいつもの服に着替え、木刀を横腰に差すと寝室から出た。
後頭部を掻きながら、お前等の銀さんが参上しましたよ。っと呟き視線を床からあげると固まる。開いた口が閉まらない。
新八もお盆を持ったまま突っ立っており、銀時に苦笑いを向ける。神楽が落ち着かない理由も分かる。なんせ身内が目の前にいるのだから。神楽の身内であり、たった一人の兄である神威がソファに座りお茶を啜っていた。
その隣には、同じくお茶を啜っている緑の髪を持つ男性とどことなく悲しげな表情をしている金髪の女性…。




「やぁ、侍のお兄さん。お邪魔してるヨ」

「してるでござる」

「えーっと……何してんですかお前等。お茶会は他でやれバカヤロー」




軽く苛立ちを覚えた銀時であった。
こいつ等が来たから起こされた、と分かっただけで不愉快さMAXだ。とっとと追い出そうとした銀時だったが新八に止められた。
眉をしかめて新八を見ると腕を掴まれグイグイ引っ張られて、台所まで連れてこられた。




「何だよ、新八」

「銀さん…実は、あの人たちお茶会とかじゃなくて依頼しに来たみたいなんですよ」

「……はぁ?それまた何で?」

「僕が知るわけないじゃないですか」

「―………」

「ぎ……銀さん?」




銀時は新八に何か言おうとし口を開けたのだが、口から声が出ることはなかった。脳裏にふと何かが思い浮かび掠めたからだ。
そんな銀時をみて新八は首を傾げ、もう一度、銀さん?と呼ぶとそれにハッと我に返った銀時は急いで居間に戻ろうと踵を返した。がいつの間にいたのか金髪の女性・また子が立っていた。




「ぅおあっ!!…び、びっくりした」

「……」

「……お、おい?」




俯いたまま動かないまた子を見て、銀時と新八は顔を見合わせて首を傾げる。彼女は己の服を握り締めている。その手が微かに震えているのは気のせいなのだろうか。
取り敢えず立ち話もアレだと思い銀時はまた子に居間に行くよう指示を出そうとした瞬間、ガシッと服を両手で掴まれたのだった。




「―…お、おい。どうし…」

「…が…ない………、す、か」

「……は?」




また子が何を言ったのか全く聞き取れず、言い返そうと口を開けたがその口は閉じるしかなかった。俯いていたまた子が、勢い良く顔をあげたのだ。
その目には今にも溢れ出しそうな涙が…。
今の彼女は、拳銃使いであることから攘夷浪士の間では「紅い弾丸」と呼ばれているとは思えないほどである。




「晋、助様が何処にもいな、い…知ら、ないっすか?!…ここ何日間も連絡がないっす!っアンタ何か知ってるんじゃないすか!!?」

「―……」

「…っ、何処にぃるん、すか……晋助さまぁぁあっ」




服を掴んで揺さぶりながら銀時に問うまた子だが、銀時は首を左右に振ることしかできなかった。その仕草を見たまた子は、顔を歪ませ耐えていた涙を流した。
掴む手の力を緩ませ、また子はストンと床に力なく座ってしまい、顔を手で覆って姿を見せない高杉の名を呼んでいたのだった。泣くまた子に新八はオロオロしていたが、取り敢えずまた子の背中を擦ってあげた。
銀時は、座り込んでしまった彼女を見て瞼を瞑った。




やっぱり、そうだったか。
…こいつ等が此所に来てんのにアイツの姿がないのは少し引っ掛かってたところだ。
たくっ、何処ほっつき歩いてんだよ…高杉。




そう。あの時、銀時の脳裏に浮かんだのは高杉であった。その時点で高杉に何かあったのか?と疑問と不安に襲われ、とにかく高杉の仲間であるまた子たちに話を聞いてみようとしたのだった。
だが、それはもう必要ないようだ。高杉の身に何かあった、それだけは分かったのだから。…分かってしまったのだ。




「銀ちゃん…」

「…なんだ?」

「グラサンとバカ兄貴が呼んでるアル」




本題か。と頭の隅で思うと居間に向かおうと一歩進む。立ち止まり、振り向くと新八は、ここは僕が。とでも言うかのように頷いた。
それに頷き返し、神楽と共に居間へと向かった。




「…お茶が美味しくて本題忘れてたよ〜」

「来島殿も見習って欲しいでござる」

「いやいや、なかなか言い出せなかっただけだろてめぇ等」




ハハハッと後頭部を掻くのは「人斬り」で有名な河上万斉。そして、見た目は冷静に見え微笑んでいるがピクリッと眉を動かしたのは宇宙海賊・春雨第七師団団長の神威だ。
彼が何故いるのかはよく分からない銀時だが、それは置いとく方向にした。ソファに座る二人の前のもう一つのソファに銀時と神楽。




「…坂田殿、単刀直入で言うでござる。晋助を見つけ出してもらいたい」

「俺からも頼むよ。あの兄さんがいないと落ち着かないんだ」

「それよりアイツ…どこに向かうって言ってたんだよ」

「…侍のお兄さん、の場所だよ」

「―……え?」




神威の言葉に銀時は耳を疑った。
それもそのはずだ。今月は会う約束などしてないのだから。いや、それとも自分が忘れてしまったのかと記憶を甦らせるが思い出せない。大体、他の約束は忘れてしまうが高杉との約束だったら死んでも忘れないのが銀時である。
首を捻くりながら考える銀時を見て万斉が口を開けた。




「お主に会いたくなって行ったようだが…それ以来戻ってこないでござる」

「……俺、に」

「そうだよ。そのようだと高杉さん…アンタに会いに来てないみたいだね」

「あ…あぁ」

「あの人、長時間、作戦考えてたようだけど、気分転換に会いに行くって言ってたよ」

「……高杉」




銀時はグッと手を握り締める。
万斉の話によると、夜も遅いし、襲撃される恐れもあるからとバイクで連れていくと言ったようだが、歩きたい。と言われ断れたようだ。
高杉は一度そう言えば、それを通したがるのだ。それは銀時だってよく知っている。高杉は追われている身だ。真選組にも同じ攘夷浪士にも。
胸の奥がモヤモヤして、銀時は奥歯をこれでもかというほど噛み締めた。




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