短編
□別れの数だけ愛を知る
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あれは、気分がてらに散歩していた時の事だった。まさか、あいつに会うなんて思ってもいなかったし予想もしていなかった…。
†別れの数だけ愛を知る†
「晋助!!貴様はちゃんと飯を食っているのか!!?ガリガリではないか!」
「うっせぇな、ヅラ。心配しなくても食ってるっつーんだよ。」
「お母さん、心配なんだ!!お前が可愛いか……ぐへ!!」
「てめぇに育てられた覚えはねぇよ、このタコッ!!」
タコじゃない桂だ!!と後ろで騒ぐ長髪を無視して高杉は、スナック屋を出ていった。高杉は、万事屋晋ちゃんのオーナーを勤めている、何でも屋。その下の階にあるのが先程のスナック屋。そこは大家の桂小太郎が営業している。高杉は、空を見上げ幾つもの船を眺める。昔は何一つ飛んでいなかった天人が来てから好き放題にやられている。
「……。」
あいつ…今、空を漂っているのだろうか。
お前は、今元気なのか??なにをしている…??
なぁ、銀時……。
―ドッカーンッ
いきなり地面が揺れなんとかバランスをとった高杉は、何だ?!と思い爆発音が聞こえたところを振り向くと、モクモクと煙が出ており、2分も経たないでまた違う所に煙が漂っていた。高杉は、迷わず走り出した。
「真選組も派手にやりやがるなぁ。」
近くに行くと複数の真選組が片手に刀やバズーカを持ち走って行くのを隠れて見ていた。
……そっちは路地裏方面か。なら、先回りしてやるか。強盗犯か脱獄者かなんだか知らねぇが手伝ってやるよ、有り難く思えよ幕府の狗さんよぉ。
高杉は、真選組よりも先にもう一つの道へと行った。いわゆる近道だ。通り慣れていない真選組より高杉は毎晩のように必ず通る為全ての路地裏の道を分かっていた。
「っと此所らへんか…??」
先回りした高杉は、角を曲がろうとしたら一回りデカい男にぶつかった。なんとか、よろめくのを耐え前の男を見るなり高杉は目を見開いた。その男も高杉と同じように目を見開いていた。
「ぎ、ん……とき」
「高、杉」
過激派攘夷浪士、坂田 銀時。昔、高杉と共に武術を学び攘夷戦争に参加した仲の一人。いきなりの再会に高杉は、戸惑ったが銀時を良く見ると怪我していた。
「銀時。お前…その怪我」
「…あぁ。真選組に殺られた」
「真選組が追ってたのは、てめぇだったのかよ!?」
こちらに近付いてくる音がし、高杉は焦り始めたが頭に浮かんで来たのはただ一つ。
「ちっ、もう此所まで来やがったか」
「おい。てめぇ、手当てしてやっから来い」
「は、冗談じゃねぇよ。誰が」
「素直に来い」
「やだ」
「ふざけんな、黙って来いっつってんだよ」
「ふざけてねぇし」
だんだん靴音が強くなるにつれて高杉は表情には現さずに焦った。なのに、銀時ときたら呑気に小指を耳に突っ込んでいる。
「早くしろ銀時!」
「俺が良いって言ってんだから良いだ―…」
「てめぇの立場を考えやがれッ!!その大怪我で何が出来る?!このまま捕まってみろ首が吹っ飛ぶぜ!?」
「……」
諦めたかのように目を瞑り溜め息をつき小さく分かった、と呟いた。高杉も、ホッとし急いで万事屋へと向かった。銀時は息切れをしており、キツそうで高杉は心配だったが今は着くまで銀時に我慢して貰うしか他に手はないのだ。
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