短編
□置き去りプライベート
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もぞもぞと布団を掻き分けて今何時だろうと枕元に置いておいた携帯を覗きこむ。
現在午前10時10分、日付も時間も丁度同じ。
お、日付と一緒じゃん。
、と言う事でHappy Birthday!!俺ッッ!!!!
†置き去りプライベート†
完全に学校に遅刻だ。平日にこの時間家にいるなんて普段なら絶対にあり得ない時間帯。
それなのに今家にいる理由は一つ。
前もって坂本にフォロー頼んどいて正解だったな。流石銀さん!あったま良いww
銀八は隣にいる猫っ毛で柔らかな髪を起こさない様にそっと撫であげた。そして、愛しい彼の頬に口付けを落とすと閉じていた瞼がゆるゆると開かれていく。まるで眠り姫が起きるみたいだ。
「おはよう、高杉。眠いんだったらもう少し寝ててもいいよ。」
起きたばかりの高杉はまだ焦点が合って無く無防備な姿を晒している。銀八だけに見せていると思うとその何気ない仕草も愛しくて仕方なかった。しかし、やっぱりまだ眠いのか高杉は瞼を擦りながら欠伸をしたが、どうやら起きるらしい。昨日は高杉が0時ぴったりに祝ってくれたことが銀八にとってあんまりにも嬉しかったらしく、ついつい朝まで寝かせなかった。
「…いい、起きる。今何時だ?」
高杉は、床に散らばって少々皺になった服に袖を通しながら銀八に質問した。が答えを聞く前に時計に目が付き時刻が分かると高杉は目を丸くした。銀八は普段はサボり常習犯の癖にこういった時は驚くんだね。と呑気にそう思っていた。
「はぁ?!俺は良いとして…お前、学校はいいのかよ?!」
「君も良くないけどね」
「……ククッ、確かにな」
教師が学校サボるなんて聞いたことねェ。と笑いながら言う高杉を銀八は後ろから抱きしめ、肩に顎を乗せた。
「教師もサボりたい時があるんですぅー。」
「てめぇはいつもサボってんだろ。」
ぎゅうぎゅう抱きしめながら言うと高杉が厳しいお言葉を投げつける。むぅ、頬を膨らませる銀八だったが改めて高杉を見ると自然に口元がニヤけた。そんな顔をしている銀八を高杉は知る由もない。
…Yシャツに袖通しただけの高杉って何かものっそいエロイ。
そんな事を思いながら銀八は話を続ける。
「先生も人間だから誕生日ぐらいは可愛い恋人と一緒にいたいの!ってことで高杉も必然的にサボり。」
「道ずれかよ」
「なら今から学校行く?」
「…やだ」
「ほらねww」
「……」
この事を計算してちゃんと連絡しといたから心配はないと銀八は思った。坂本がちゃんと手続きしてくれたなら、の話である意味そっちの方が心配だった。考える事が多い銀八だが、はだけたシャツの間からちょっとした悪戯心で高杉の腹部を撫でてやると昨日の今日での余韻のせいか高杉の体がビクリと反応する。
「あっれぇー、高杉君もしかして感じちゃった〜?」
「…ッ、ん」
「昨日あんなにしたのに、」
「…ゃ、め」
「まだ足りないのかな?」
とからかえば容赦なく高杉は銀八を殴った。
しかもパーじゃなくてグーだ。それは幾らなんでも酷いんじゃない?俺も悪かったけどさぁ!と頭の隅に置いて思っていた。痛みで殴られたところを押さえている間に高杉は気が付いたらきっちり服を着終わってた。
あぁ、何か勿体無ない。
もう少し眺めておきたかったなぁ。
なんであんなに白い肌してるんだろ…。
萌えるじゃねぇかコノヤロー!!!
一人テンションmaxになっているといつまでそんな格好でいる気だ!!っと投げ付けられた。只今、銀八の格好はパンツ一丁だ。銀八は、服を面倒くさそうに着替えていく。流石にこれ以上高杉の機嫌を損ねたら本気で帰りかねない。着替え終わり一段落したところで一息入れる為コーヒーを二人分カップに注いで高杉の前にカップを差し出す。
「コーヒーで良かったよね?」
「あぁ。今日はコーヒーが飲みてぇ気分」
高杉はカップを受け取って熱いコーヒーに息を吹き掛け冷ましている光景を、銀八は微笑ましい上可愛いらしくて仕方ない様子で見ていた。
これが見たいから高杉が来た時は必ず少しだけ熱いコーヒーを出すようになったんだよなぁ。猫舌晋ちゃん可愛いッッww
「…誕生日、何が良いか決まったのかよ」
「え??」
高杉の口から、ポツリと小さな声で言われた一言に口をぽかんと開けた。
そう言えば昨日そんな事聞かれた気がする。
確か俺は「高杉が欲しい」って言ってすぐ押し倒してたからもう貰った事になってると思うんだけど…。
「何言ってんの昨日貰ったでしょ。それとも記憶飛んじゃったとか?」
「違う!!…別にあんな誕生日じゃなくてもやってんだろ。他にしろ、他!!」
「えー」
もうなんか俺の誕生日なのに強制的に変えられてるよ。俺は、昨日ので充分満足なんだけど…なんて口にしたらもう一発本気で殴られるに違いないから敢えて言わないでおこう。
銀八は、片手に持っていたカップを机の上に置きその手を顎に近付け考えた。必死に考えても欲しいものなんて出てこず、急には出て来なかったが閃いたのか目を輝かせた。
「高杉…それってなんでもいいの?」
「さっき以外だったらな」
高杉は、コーヒーを飲みながら答えた。そっと高杉の頬に手を当てるとピクリっと跳ねた。ホントに高杉って可愛いね、と言い足した。
俺が欲しいもの……。
それは、普段出来ないことで尚且俺が一番欲しいもの。
「高杉、今日一日俺とデートしてくんない??」
そう告げると高杉は、意外だったのか少しの間ぽかんとしていた。やっぱり怒られるかな?と思ったが、銀八はそれが一番欲しいものなのだから怒られても変える気など更々ない。
俺だって一応教師という者の仕事がある。
暇に見えそうで案外暇じゃない…。
土・日でも休みであるのがホントに少ない。だから、一日高杉とデートなんかした事がない。だからこそ、高杉との時間が欲しいんだ。
「…別に良いぜ。絶対ぇ忘れられない誕生日にしてやるよ」
「そりゃ…楽しみだなぁ」
高杉の頬が少し紅いのは嬉しいからだろう。
そんな事を思いながら高杉の手を引いて玄関に向かった。
飲み掛けのコーヒーと普段の関係を置いて二人で出掛けよう。
今日だけは、
教師も生徒も全部置いて恋人として―…。
「あ…銀八」
「なぁに??」
「生まれて来てくれてありがと。…大好きだ」
「ありがと、晋ちゃんww俺も大好きだよ」
10/10 Happy Birthday!!
*fin*
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