短編

□振り向いた先に…
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「……ッぐ!」




しくじったッ!!
まさか利き腕を殺られるとは…。
しかも、敵の刃が左足の腿に掠って思うように動かない。




「グゲヘヘヘ。何処まで逃げるのかな??鬼兵隊総督さんよー」

「……ッ」




周りは深い霧に包まれ、高杉の後ろからは天人三体が不気味な笑みを高杉に向けて近寄ってくる。高杉は、慣れない左手で刀を握り天人に向けて構える。




「慣れない左手で勝てるとでも??」

「……ッ」

「可愛い目で睨まれてもなぁ」

「フン…寝言は寝、て言え」




死ぬわけには行かない…。
俺には…帰る場所があるッ!!
アイツが…銀時が待ってんだ。廃寺で…ッ!!




そう思うのだが、高杉は既に限界をこえているのだ。足もフラフラで意識も薄れていた。




「殺すのも勿体ないよな〜」

「何言ってんだよ」

「じゃあよ、アカバさんに渡したら喜んでくれねぇかな??ホラ、前、あの人がコイツを遠くで見て惚れたとか何とか言ってたじゃねぇか」

「そうだな、死なない程度に痛めて連れて行くか」




アカバって誰だ…??
…駄目だ。意識が朦朧として考えれない。




「―…ッ近寄、んなッ!!」



考えていた高杉だったが、ゆっくり歩み寄ってくる天人に顔を歪ませた。一歩下がると違和感を感じた為、足元を見ると高杉は目を見開いた。行く先がもうないのだ。霧のせいで道が見えなかったが少し霧が引き辺りが見え始めたのだ。少しでもバランスを崩してしまえば真っ逆さまに暗闇に落ちてしまうだろう。




「…ガラ空きだぜ!!」

「―…ッ!!しまっ…」




気付いた時には遅く嫌な音が聞こえた。高杉は胸元から腹にかけて、斜めに斬られ血がドッと大量に出てしまったのだった。高杉は、血を吐きそのまま後ろにぐらついてしまった。一瞬、視界が暗くなった。




…落、ちる。




そう思った高杉だったが血を流しすぎたせいか、気が遠くなり意識を失い、そのまま、霧深い闇の中へ落ちていったのだった。
崖の上からは、天人の声が響き渡っていた。







銀、時―…。











†振り向いた先に…†











「おい!!ヅラ!!!」

「ヅラじゃないかつ―…」

「今はどうでも良いだろうがぁぁぁあ!!!!」

「ごもっと…ぶらぁぁぁぁあぁ!!!」




銀時は、力任せに桂の頭を殴りつけた。今、攘夷戦争に参加している者たちは大いに慌てている。冷静であるはずの桂でさえ慌てているのだ。




「晋助はまだ帰って来てないよな!!?」

「あぁ…」




そう、高杉がまだ帰って来てないのだ。
いつもなら、自分の側にいるはずなのに、いないことに銀時は焦っていた。大事な人が帰って来なければ誰だって焦る。ただでさえ、いつ死ぬか分からない恐怖の場に立たされているのだから。




「…ッ俺、もう一回探してくる」

「待て、銀時!!」




銀時は、桂の止めも無視し廃寺から出て行った。先程探したルートをもう一度辿り愛する人を探す。死んでなどいない、何処かにいる、その思いを頼りに足を運ばせた。




「晋助ぇぇ!!いたら返事しろー!!」




…勿論、返事は返ってこない。銀時は、パニック状態に陥らないようにしているが、それにも限度というものがあった。銀時は、近くの木々の中を探してない事に気付き、木々の中へ入って行った。辺りは夜で夜空には満月が浮かんでいた。その美しさは、真夜中の夜には不気味という程の美しさであった。




「……何処にいんだよ…ッ晋助」




ポツリと呟いた言葉は、風に揺らされる葉に遮られたのだった。銀時は、諦める事なく歩き続けた。すると、川の流れる音が聞こえてきたのだった。この近くに川があったのだと今気付いた銀時は、その場所に足を踏み入れた。月の明かりによって、水が反射しキラキラと光っていた。その光景は、折れた木とか枯れ葉が浮かんでいるが、満月より綺麗だと銀時は思ったのだった。




「……ん??」




さらに近付いた時だった。銀時は、川に浮かぶ木に人影を見つけたのだ。その木は、プカプカと漂い、月明りの範囲に入ってきた。
その時、銀時は自分の目を疑った。自分たちが探していた人物がいたのだ。今は冬の時期。長い間入っていたら確実に生き絶えてしまう。気付けば銀時は、川に飛び込み高杉を助けにいった。




「晋すッ…おい!!晋助!!!」

「……」

「聞こえるか!!?晋助?!」




…冷たいッ。
何時間入っていたのだろいか。
それに、酷い怪我だ。




「……ッくそ」




銀時は、高杉を川から救い自分が着ていた羽織を高杉に着せた。今の銀時にはこれくらいしかできなかったのだ。




はやく…はやくヅラと辰馬の所へ!!!
―…晋助、死ぬなッ!!




銀時は、高杉を抱えると全力で走った。林の中で行く手を阻む、草や枝が頬や首のような皮膚を切るが、銀時は無我夢中で廃寺へと向かった。




死ぬな…死なないで、晋助!!
絶対、俺が助けてやるから!!!
俺を置いて逝かないでくれ!



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