短編

□Happy Happy BirthDay
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「……」

「大丈夫っすか?晋助様」

「あぁ…」




目頭を抑える高杉にまた子が声をかけた。
計画を練るのに十分に寝ていない高杉は疲れが溜まっているのだ。




「少しは休んだ方が良いっス!じゃないと、計画を実行する時、体が持たないっすよ」

「そうだな。…悪い、少し休む」




立ち上がり出口へと向かう。
ふぁっと欠伸を一つ零し、目をこする。
スーッと襖を開けると、先に続く廊下ではなく信じられないモノが飛び込んできたのだ。




「あらやだ。この子、僕たちが開ける前に開けちゃったよ」

「儂らがおるの分かって開けたんじゃあvV」

「本当か!お母さん、嬉し、」




スパーンッ!!と高杉は襖を閉めた。
その表情には、ダラダラと汗を流している。勿論高杉だけじゃなく高杉の仲間たちもだ。
そして、今まさにこの中の者と思いが一致した事だろう。"何でアイツ等がいるんだ?!"っと…。










† Happy Happy BirthDay †










「…今、なんかいたか?」

「……いたっス」

「居たでござる…」




だよな…。今、馬鹿トリオがいた。
斬るか…。所詮、いつか殺り合う事だしな。




刀に手をやり、鞘から刀を少し抜く。と同時に襖が開かれ、その手を止められた。
ギョッとし目の前にいる人物を見る。銀髪の髪を靡かせた銀時が己の手を握って、ニヤニヤと笑っている。




「放しやが………うぉ?!」

「大将いっただきー」

「バイビー」

「撤収じゃあ」

「ちょっ…待てやてめぇ等ぁああ!」

「晋助様ぁあぁ」




高杉は、銀時に横抱きにされると一目散に連れ出されてしまったのだ。万斉たちは、口をポカーンッと開けてその後ろ姿を見ていた。
素早く我に返ったまた子が、追うッスよ!と仲間に言い聞かせたのだった。




「おい、放せ!銀時!!」

「無〜理ぃ。だってお前放したら逃げるし?色々と面倒だし?」

「ふ…ざけんな!下ろせや、糞天パァ!死ね」

「うるせぇな…犯すぞ」

「……なっ!!?」




見下ろしてくる銀時に高杉は頬を赤くした。
そんな銀時に残りの二人が頭を殴ったのだった。




「貴様、そんなのを狙っていたのか」

「晋が嫌がるのも当たり前じゃ」

「いや銀時だけじゃなくて…てめぇ等もな」




ちっ…どこ行く気なんだよ。
コイツ等の行動は、昔から読めねぇから好かねぇ。それに、何で居場所知ってたんだ?




「着いたぜ」

「……?」

「久し振りに酒でも交わそうじゃないか」

「……は?」




連れて来られた場所は、景色も良くいかにも高そうな部屋だ。そこには、食事や酒が並べられていた。
そこに下ろされ、高杉は銀時にちょこを渡されたのだった。




「ホラ、飲もうぜ」

「……」




高杉は戸惑いながらも黙って受け取った。
全く何がなんなのか分からなかった高杉は、少し落ち着きがなかった。




「ほれ!晋の好きな酒もあるぜよ」

「クク…覚えてたのか」

「勿論じゃあ。儂もこの酒、好きぜよ♪」




久し振りに集まった四人は、酒を交わした。
高杉も、いつの間にか戸惑いとかも消えていた。ただ、敵である事を忘れて楽しい時間を過ごしていた。




「銀時」

「あ?なんだ?」

「何でいきなり飲む事になった?」

「……何でだと思う?」

「―……?」




久し振りに向けられた優しい笑みに高杉は首を傾げた。いきなり飲む事になったのは嫌ではない。
むしろ、恋人の銀時とはたまに会って飲んでいたとしても、もう二度とこの四人では交わせないと思っていた。




「…そろそろじゃねぇか、ヅラ?」

「ヅラじゃない桂だ。…そうだな」

「十秒前ぜよー」




腕時計を見ながら坂本がカウントダウンを始める。謎が深まるばかりの高杉は疑問符を幾つも浮かべている。
五秒前になると銀時と桂も坂本につられてカウントダウンを行う。その際、銀時と目が合い自然に高杉も口を開いた。




「3…2…1……」




次の瞬間、心地よい音が鳴り夜空に綺麗な花が咲いた。花火である。
景色が良く、花火が良く見れる。
高杉は、綺麗な花火に釘付けになった。しかし、今日は祭りがあっただろうか、と頭の隅で考えていた。




「綺麗、だ」

「…だな。晋ちゃん?」

「……あ?」




銀時に呼ばれ振り向くと笑みを向けてこちらを見る銀時と坂本、桂がいた。
暫く、三人を見ていると思ってもみなかった言葉を聞いたのだった。




「「「誕生日おめでとう」」」

「―……ぇ?」




壁にかかってあるカレンダーに目を向けると日にちはは…八月十日。
つまり、高杉が生まれた日にちである。
高杉は全く気付かなかった。計画ばかり考えていた高杉の頭は、自分の誕生日すら頭に入ってなかったのだった。




「やっぱな。忘れてると思ってた」

「理由もなく無理矢理お前を連れてくる訳なかろう」

「今日は良い日じゃ!今日ぐらいテロ計画はやめい」

「お前等…」




敵だというのに、昔のように祝ってくれる三人に高杉は目を細めた。
花火が綺麗に咲き誇る中、三人は花火の明かりによって見える高杉の笑みが綺麗だと思ったのだった。




「晋…この花火は儂からじゃ!!」

「俺からは見ろ!エリザベス人形ちゃんだ」

「―…あ、ありがとう。すげぇ嬉しい」




そう、花火は坂本が花火職人に頼んで行ってもらったのだった。まさかの出来事に高杉は驚かせられてばかりである。
エリザベス人形を手に持ち、高杉は二人に礼を言った。桂が銀時に目を向ける。




「銀時、お前もあるのだろう?」

「も、勿論だ!…晋ちゃん」

「……?」

「プレゼントは俺だよ!!」

「いらねぇ」

「即答!!?」




銀時は両手を広げて言ったがその思いは儚く崩れた。高杉の素早い答えによって。
硝子のハートを持つ銀時は、畳に蹲って啜り泣きをしている。




「どうせ金がなかったのだろう貴様は」

「おめぇにわかるかよ?!金が入っても大家のババアと怪力暴食娘で飛んでいくんだよ」

「お前には期待してねぇから気にすんな。…それより飲もうぜ」

「アレ?何だろ…目から大量の汗が流れてんですけど?何コレ?」




高杉は、フンッと鼻で笑うと三人に持たせたちょこに、酒を注いだ。
そして四人は、夜空に咲く花火を見ながら楽しい一時を過ごしたのだった。













「寝ねぇのか?」

「…もう少し見ていたいんだ。ここの景色を」

「そうか」




酔いが回り寝た桂と坂本を避けて銀時は、窓際で景色を見る高杉の横にドカリと座った。
微かな風が優しく吹く。




「今日はありがとな。嬉しい事この上ない」

「そりゃ良かった。…ほらよ」

「……?」




渡された包みを銀時から受け取り、銀時を見る。ポリポリと頬を掻き、プレゼントだよ。と呟かれた。




「なかったんじゃ」

「恋人に買わない訳ないっしょ!二人になった時に驚かそうと思ってな」

「―…銀時」




箱を開けると中には、煙管。
目を真ん丸くして銀時を見る。




「銀時…コレ」

「まあ、なんだ?何度も考えたんだけどよ、煙管しか思いつかなくてな」

「いや……素直に嬉しい」




煙管を取り出し、柄を見る。持つ所には、蝶が彫られており綺麗に飛び散っている。
銀時曰く、高杉は蝶が似合ってるから見た瞬間コレだと思った、らしい。




「晋助…誕生日おめでとう」

「…ありがとう、銀時」






二人は身を寄り添わせキスをしたのだった。










愛しい愛しい君。
生まれて来てくれてありがとう。










*fin*
--------------
高杉さん、誕生日おめでとう!!


そして、こんな話を読んで下さった方ありがとうございます!
なんとか間に合ったので良かったです!←
今回は、銀さんと二人にしようと思ってましたが、ヅラさんとモジャさんも混ぜました!


少しでも楽しく読んで頂けたら嬉しく思います!!


8.10 冬夜

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