短編

□友なら友なりの祝い方で…
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「あ゛あぁぁぁぁぁぁ!イライラする!」

「うるせぇよ!静かにしろよ!」

「だってよ〜」




だってもクソもない。と銀時は高杉にベシッとはたかれた。
叩かれた頭をさすりながらちぇっと頬を膨らませたのだった。




10月10日。
今日は銀さんのHappy Birthday!
それなのに、テスト勉強をしなくてはいけないなんてっ!
あんまりじゃないか!!










†友なら友なりの祝い方で…†










高校三年生の二学期の中間テスト。
それが来週の平日からあるため、銀時の家で勉強中なのだ。
銀時と一緒に勉強しているのは、同じクラスの高杉と桂、そして坂本の三人である。




「全く貴様という奴は…、少しは緊張感とやらを持ったらどうなんだ」

「まったくだぜ。てめぇが分からねぇって言うから俺たちが来てやったっつーのに」

「金時ぃ…ここはこうじゃきぃ」

「………」




そう、ここにいる三人は勉強が分からない銀時のために集まってくれた心優しい者たちなのだ。
桂と高杉は昔からの銀時の幼馴染みであり、坂本は高校からの付き合いである。
四人は強い縁で結ばれているのか、この三年間ずっと同じクラスだ。




「晋助がチューしてくれたら頑張る」

「……あ゛ぁ?」

「…だそうだ。なら、してやれ」

「なんでだよ!!?」

「五月蝿い奴を抑えれるのは、お前しかおらぬだろう」




いやいや…。意味分からねぇから。
なら、お前がしてやれよ。




ほら、早くっと銀時に急かされ、高杉溜め息をついた。持っていたペンを机に置いた。
もう少しで唇に重なる範囲で高杉の動きが止まり、プルプル震えている。いつも二人だとどうってことないのだが、桂たちがいるため戸惑っているらしい。




「無理。勉強しよーぜ。時間が勿体ない」

「えー!しよ〜よー!」

「後でしてやっから。集中しろよ」

「えー!!晋ちゃーん」




ベキッとペンを折った高杉はニッコリと笑って、な?、っと銀時に言ったのだった。
勿論、これ以上言ったら命がないと察した銀時は、はい。と頷いた。
そんな高杉に桂と坂本は苦笑いを向けたのだった。




「ん?のぉ、晋。これどうやるんじゃ?」

「あー、これはな…これをこうやって」

「おー、そうじゃったな」

「すまん晋助、俺も教えてもらいたいものがあるのだが」

「仕方ねぇな…いいぜ」




高杉は意外と頭が良く、クラスの生徒から頼りにされているのだ。
二人が高杉に聞く中、銀時はその様子を眉間に皺を寄せて見ていた。




晋ちゃんは、銀さんだけ見てたら良いのに…。あ…そっか。
晋ちゃんは優しいもんね。
分かってるよ…けど、俺悲しいな。
相手にしてくれないから。




はぁっと溜め息を小さくついた銀時であった。
仕方なく床に置いてある苦手な数学の教科書とワークを取り机に広げたのだった。
しかし、広げた時点で手の動きが止まる。
見たくもない数字がズラーッと並んでおり、グラフがかかれてある。それだけでやる気が失せてしまうのだ。




「銀時…」

「あ?心配しなくてもやってますよ〜」

「それは見て分かってる。…分からなかったら言えよ?」

「……ありがと」




やっぱ、晋助は優しいわ!!
可愛すぎなだよコノヤロー!!




高杉は、若干鼻歌をしながら勉強に取り組む銀時を見てフッと微笑んだのだった。
桂たちも銀時がどれだけ高杉に惚れているのかは、定かではないが雰囲気で伝わってきた。
それからというものの、あれだけ嫌がっていた銀時も集中し始め問題をゆっくり解いていったのだった。
時々、高杉や桂たちに理解できぬ問題を聞きいてはすぐ理解していった。
今の銀時は、真剣な表情であり先程の出来事が嘘のようだ。




「ほぉ〜。貴様も集中したら出来るものなのだな」

「いざというときは、銀さんだって出来るんですぅ。糞ヅラ」

「ヅラじゃない桂だ!…ぐばっ」

「ヅラ、邪魔…」




ズイッと隣にいる桂を押し退け、高杉は銀時の側までやって来た。その手には、歴史の教科書が握られていた。




「銀時…確かお前歴史得意だったよな?」

「……そう、だけど?」

「少し分からねぇんだ。教えてくれよ」

「そうなんか金時!わしも教えてほしいぜよ〜!!」




そう、銀時にだって得意分野はある。
それが、歴史と国語だ。
ここにいる高杉にだって人間なのだから、分からない事だってある。銀時は、おう!っと笑って高杉から教科書を受け取ったのだった。




「……ってな訳よ。分かった?」

「あぁ。これで歴史大丈夫そうだ。さんきゅ!」

「恩にきるぜよ〜、金時」

「うむ…流石だな」




何気にちゃっかり聞いていた桂を殴り銀時は、照れたように笑ったのだった。
時計を見ると八時を回っており、辺りは暗くなっていた。
気付かなかった四人は、今更空腹に気付いたのだった。まぁ、それ程、勉強に集中していた、という証拠である。




「腹減ったの〜。何か買うてくるか」

「そうだな。悪ぃけどヅラと買って来てくれよ。俺まだ銀時に聞きてぇ事あんだ」

「了解じゃき。ぅおーい、ヅラ行くぜよ〜」




銀時に殴られ床に伏せている桂を坂本は頭をペシペシッと叩いて告げる。
ゆっくり起きるのは良いのだが、桂がまるであの「貞子」のように見えた三人であった。




「そんじゃま、行ってくるぜよ〜」

「おう…気をつけてな」




二人が居なくなると一気に静になり、少し気まずい。やっと二人になれたが、銀時は何故か緊張していた。




俺に聞きたい事って何だろう?
まだ、分からないとこあんのかな。
なら…なにか喋ってくれよ晋ちゃーん!
何!?この気まずさ!!?何この沈黙!?




一人騒ぐ銀時であった…。




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