短編

□君に見せたくて…
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「……」

「よぉ…お邪魔してまーっす」

「……なんで居んだよ。あ?」

「銀さんが来て嬉しいくせにぃ♪照れ屋さんなんだからぁ」

「………」

「嘘です、嘘です!!お願いだから刀、鞘に戻して!…ごめんなさいっ!」

「…フンッ」










君に見せたくて…










「……海?」

「そう、海!!せっかくだし、行かね?」




ここは、鬼兵隊が集まっている宿の中。
先週、陸上に降りた高杉たちは闇組織が営業する宿に身を隠し、策を練っていた。今日はここまでにしておこう。っと仲間と別れ、高杉は部屋に戻ったのだ。
その時に、居なかったはずの銀時がいた。呑気に、宿にあったお茶を淹れ啜っていたのだった。高杉には、何故場所が分かった!?っと表情には出さず、心の中で叫んでいた。
一人で考えているのにも関わらず、銀時は高杉に気づくと、やぁ。とでも言うように片手をあげた。それにイラッときた高杉は、刀に手をやったが銀時に懇願され、しまった。内容を聞けば、どうやら明日の早朝、海に行かないかっとの事らしい。
海かぁ。っと高杉は考えてはみる素振りを銀時に見せる。




「……」

「……」

「……行かね」

「なんでぇえ!?そこ普通、行く!じゃねぇの?!」

「俺ぁ忙しいんだよ。大体、海なんて陸上に降りる時に見てんだよ。お前より先に海に出迎えられてるし、上空する時ぁ、海が見送ってくれるしなぁ」

「……おのれ、海」

「………海に妬いてんじゃねぇよ」




嫌みたらしく言ってやると、銀時は眉間に皺を寄せて唸った。そんな銀時を見て、高杉は呆れる。海に行こうと言った銀時本人が海に妬いているのだから。しかし、愛されてるんだな。と銀時が何かに妬く度そう感じる。
しょんぼりというよりムスーッとしている銀時に高杉は笑うのに堪えていたが、堪えられなくなり笑った。銀時は、何が可笑しかったのか目を丸くさせて高杉を見ている。




「何、笑ってんだよ」

「クク…て、めぇが変な顔してっから……ハハっ」

「酷ッ!!銀さん、今傷付いたよ?!つうか、人の顔見て笑うとか何様だよコノヤロー!!」

「……テロリスト様だバカヤロー」

「棒読み?!つか、なんか可愛いんですけどッ」




高杉は息を吸って、フゥッと息を吐いた。
まだ、いじけている銀時の頭を叩く。
何すんだよ。と少し不機嫌な声がするが無視をして高杉は押し入れを開け、布団を畳に敷く。完璧、寝る準備をしているのだ。




まじでぇえ!?
ちょっ…晋ちゃぁあん!
何コレ?追い出されるパターンじゃんッ!
泣くぞ!銀さん泣いちゃうよ?!




「何、アホ面してんだよ。早く寝ようぜ」

「……へ?」

「明日…その、は…早いんだろ?」

「……じゃ、じゃあ!」

「し、仕方ねぇから…行ってやるよ」




顔を若干赤らめて、高杉はそう言った。
本人は隠しているつもりなのだろうが、目を泳がせているのが何よりの証拠である。晋ちゃぁあん!っと言いながら銀時は高杉にタックルするかのように抱き付いたのだった。
勢いにそのまま二人は、布団の上に倒れる。




「ばっ…バカか、てめぇ!離れろ!!」

「無理ですぅ。銀さん今、幸せに満たされてっからぁ」

「………バカヤロ」




ぎゅうぎゅう、と力強く抱き締めてくる銀時から、甘い匂いがし高杉は目を細める。何ヵ月振りに嗅いだ銀時の匂い。甘いのが嫌いな高杉でもこの甘い匂いは好んでいる。
銀時の着流しを片手だけ掴み、高杉は瞼を閉じた。不思議と眠気はすぐに訪れて、銀時の、おやすみ。っという声を最後に聞いて高杉は眠りについたのだった。










「はい…どうぞ」

「ん?…あぁ、さんきゅ」




銀時と高杉は早朝から宿を出て、海へ向かった。
着いたのは昼になる時刻であった。高杉が船を浮かべた海と違ってゴミもなく、海がキレイであった。海の中が透き通って見え、高杉は思っても見なかった海のキレイさに、喜んだ。
あまり泳ぐ事を好まない高杉だが、銀時が用意していたのもあり、入ろう!の連呼もあった為、入ることにしたのだった。水着を着て、上にTシャツを着る。銀時は水着を着ただけだ。
銀時なりに思いがあったのだろうが、上半身の日焼けを妨げられると思えれば有り難いことであった。
十分遊んだ二人は、少し休もう。とのことで「海の家」に訪れ、かき氷を食べていた。
そんな矢先のことであった。
座ったイスから正面を見ると、かき氷の上にマヨネーズをこれでもかとかけている人物と目があってしまったのだ。




「「………(・・;)」」

「た………た、か」

「「………(°Д°;)」」

「高杉ぃぃいいいいいいいっ!!!」

「「………っ(逃)ε=ε=(ノ ゜д゜;)ノ」」

「あ……待ちやがれっ!!…つうか、意味のねぇ顔文字、地味に腹立つんですけどっ!!」




そう、そこにいたのは真選組鬼副長・土方十四郎がいたのだ。目が合ってもお互い固まり数十秒見つめ合っていた。動き出したのはほぼ同時であった。
高杉に二つかき氷を持たせ、銀時は高杉を肩に担ぎ上げ「海の家」から出た。土方も少し遅れたが、二人を追いかける。




「なんで居んだよアイツ!一人で海?!痛い痛い痛い痛いよー、おかーさーん!ここに痛い人がいるぅ。穴掘ってー!できるだけ大人一人埋めれるくらいの!!」

「うるせぇぞ万事屋ァ!!俺ぁ見回りで来てたのを休んでただけだ!分かったら高杉を渡せ!大体てめぇ何で、ソイツと居んだよ?!鬼兵隊とつるんでたのか?!」

「何のことですかぁ。何処にあの高杉がいんだよ?それに、キヘイタイ?なにそれ?木の兵隊さん?…痛い痛い痛いよー!おとーさーん!!ここにやっぱり痛い人がいるぅ!」

「…こいつらに隕石叩き落としてくださーい。できるだけ世界がぶち壊せるくらいの」

「晋ちゃぁああんっ!!?」




後ろから、やっぱり高杉じゃねぇかぁ!!っと土方が叫ぶ声が聞こえる。回りにいる人たちが砂浜を全力で走る銀時と土方を見て、驚きもあり自然に道をあける。
さて、どうするか。と本気で考えてきた銀時は頭を働かせた。若干ピンチだというのに、高杉はククッと笑いだした。どうしたのかと思ったら、高杉は薄い笑みを銀時に見せた。
何か策があるのだろうか余裕の笑みを向けている。




「晋ちゃんいつのまにソレ…」

「お前に担がれる少し前に、な。取ったんだよ」

「流石、晋助」




銀時にソレを渡すと銀時は立ち止まり、振り返り土方を呼ぶ。土方は、やっと諦めたか。と思った矢先、目を見開いた。銀時の手には土方の好物・マヨネーズがあるではないか。
そう、かき氷にかけていたあのマヨネーズだ。
それを高杉が持っていたのだ。
ほしいか、そうかそうか。なら取ってこーい!っと言い、銀時はマヨネーズを遠く高く飛ばしたのだった。土方は犬のように取りにいってしまった。
それじゃ今のうちに。と前を振り向くと、ミントンを持った山崎がいた。




「万事屋の旦那。高杉を渡して下さい」

「だからー、こいつ似てるだけで高杉じゃねぇの。こんな可愛い奴があの高杉に見える?」




そう言いながら肩から担ぎ上げていた高杉を横抱きにし山崎に見せる。高杉は、困ったような顔をして山崎を見つめる。その裏では、なんで俺が!と思っていた。
山崎は銀時から高杉じゃないという高杉本人をまじまじと見る。そして…。




「ホントだ。高杉じゃないですね。迷惑かけました。それじゃ、ごゆっくり」

「おぅ。お前らの副長にもそう言っとけ」

「はい」




そう言うと山崎は去っていった。
山崎がバカで良かったと二人は思ったのだった。




「…ごめんね、晋ちゃん。こんな風にしたくて連れてきた訳じゃなかったのに」

「…俺は案外、楽しかったぜ?」

「そっか。なら良かった…少し危なかったけど」

「クク…まあな」




丁度二人がいた先から少し歩くと、人気のない浜辺があった。そこに座り、少し溶けてしまったかき氷を食べたのだった。食べ終わったら、海の中に入り遊んだ。
高杉は、鬼兵隊の事を少し忘れて銀時と楽しんだのだった。
時刻はあっという間に過ぎていき、銀時と高杉は銀時が既に予約していた宿に入っていった。風呂に入り、上がると浴衣に着替えて部屋で酒を交わす。




「今日はありがとな。楽しかったぜ」

「俺も楽しかったよ。……あ、そろそろか。晋助…ちょっと来て」

「え?」




言うが早く銀時は高杉の細い腕を掴み、部屋を出る。
どこに行く?と問うても、いいからいいから。と返事をする銀時。それに高杉は、まぁ、良いか。と思いそれ以上言わなかった。




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