連載

□第2話
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肌寒い風が透き通り俺の髪を靡かせた。
夜に窓から見る景色は綺麗で仕方ない。
俺は煙管を吹かしながら窓際に座っていた…。



「…ッ腰痛ェ。
あの糞ハゲ手加減なしかよ」


今日は、ハードだった。
客が昨日より倍の気がする。



「坂田……銀時」




昼間に会った銀髪の男…。
侍のような格好をしていたが何処か違うと思ったら刀ではなく木刀だった。
それが、何故か笑えた。
人を殺さない為の木刀に死んだような魚の目…。
こいつ、平和ボケだな。とすぐ思った。




「……。」




平和ボケ、か…。
一度はしてみたいものだ。

もう此処に何年いるか…。
想像も付かないし、記憶すらない。
ただ思う事は……、
久し振りに『自由』というものをあじわいたい…。


『自由』だった頃は…
餓鬼の時だ。
覚えているのは…『桜』


温かい春にしか咲かない綺麗な花…。
満開に咲き人々を癒す。
去年の春には、桜が見れなかった。
此処…“floral clock”は
遊郭の中では建物も豪華でデカい…。
だけど、それより遥かにデカいものがある…。
それによって桜の木が見えない。
遊郭に入った以上…
もう外の世界には出られないのだから…。



「……三日月か。」



綺麗な三日月が雲一つない空にぽつんといた。
街の光と三日月の明かり…。
最高に綺麗だと思った…。
気分も良くなった事だし、
三味線でも弾くとしよう…。


俺は、そこに置いてあった三味線を取り弾き始めた。
三味線は、小さい頃に父親に習った。
半端無理矢理だが…。
最初は全く興味がなかった。
だが…弾いていくうちに楽しくなり自分で歌詞も作る程になっていた。



―ベン…ベン、ベベン



暇な時は…いつも三味線を弾いて潰していた。



―ベン…べ……



だけど、昼間に会った銀髪の男に『また、来てくれるか…?』と言うと迷いもなく『いいぜ』と言ってくれた。



「クク…ホントに来んのかよ。」


まぁ、期待はしておこう…。



なぁ…坂田 銀時―…。




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