連載

□第16話
1ページ/1ページ





鋭い刃が互いの皮膚を引き裂き合い紅い液体が床に散らばる。銀時と爾来は互角同士で闘っていた。




…こいつ。本気でかかって来てんのか??
気を抜いている気がする…。




「どうした??もうへたばったか??」

「…ムカッ、ナメんなよバカヤロー!!」

「だろうな。精々楽しませてくれ」

「……」




銀時は本気出して爾来と互角で体力は減っていくばかりなのに、爾来は疲れなどが感じない。




あー、くそ!!!
こりゃあ、やっぱり簡単に倒せねぇよなぁ。










「……」




やけに騒がしいな。俺がいない事でこんな大騒ぎになる訳ねぇ。誰かが侵入したのか…??
…これで爾来と鉢合わせになってしまったら俺どうなるんだろうな。




高杉は考えただけで鳥肌がたった。そんな事を考えていた高杉は後ろからゆっくり近付いてくる人物に気付かず、腕を強く握られた。




「……ッ!!!」

「高杉、捕まえたぞ!!さぁ、部屋に戻れ!!此所は危険だ、何者かが侵入したんだ!」

「…ッ放せ!!俺は此所から出る!」

「何を馬鹿な事言っている!!早くしろ、こっちへ来るんだ」

「…天人の分際が俺に命令してんじゃねぇ!」




高杉の態度が気に入らなかったのか天人は片方の手を振り上げた。高杉は、目を固く瞑ったがいくら待っても痛みが一行にやって来ず逆に天人の悲鳴に近いくぐもった声がした。目をゆっくり開けると天人がドサリと倒れ血を流していた。それを見た高杉は口元を押え目を逸した。




「……ぅッ」

「大丈夫か…??」




声がした方向を見ると、死体の手前に黒い服を来た男が4人。その男たちが持つ刀には血がへばり付き流れていた。




「……ヒッ」

「怖がらないで下さい。貴方が高杉さん、ですか??」

「……あ、ぁ」

「旦那が探してた奴ですね、土方さん」

「そうだな、一緒に来い」

「てめぇ等も俺の邪魔しに来たのか!!?」

「違ぇよ、邪魔しに来たら今の奴斬っちゃいねぇよ。…万事屋に頼まれたんだよ」

「よろ……ず、や」




―…銀時?!









「「おおぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」



何度も刀同士がぶつかる音が響く。威風が広がり吹き飛ばされる天人もいれば飛ばされないように耐える者もいた。刀が離れた瞬間、爾来が銀時の眼球に向けて一突きしてきギリギリで上半身だけ後ろに下げた直後、爾来がかがみ込み脚払いされたせいで銀時は地面に倒れてしまった。それを見計り爾来は刃を銀時に突き刺そうとするが銀時が爾来の腹を蹴りあげ、爾来がよろめきなんとか危機から逃れる事が出来たのだった。




「いきなり急所にくるたぁ、思っても見なかったぜ…」

「フン、命拾いしたな」

「…何でそこまでして高杉を自由にさせないんだよ」




銀時の質問に爾来は口元をつり上げ鼻で笑った。なんだそんな事かと言いたいのだろう、そんな顔つきだ。銀時は、爾来の答えを待った。






「簡単だ、買ったからだ…。それにあいつは、此所のNo.1だ…そう簡単に逃がすわけないだろう」

「………」

「此所"floral clock"は、疲れた客が癒される為に作られた秘密場所だ。君たちはあの子に弄ばれてるだけだ」

「……」






『抜けたいって思った事ないのか?』

『まさか…。あるに決まってんだろ。一回…抜け出そうとしたんだが…結局見つかって酷い目に遭った』






「晋助は人にちょっかい出すの好きでな」






『いいか!!よく聞けっ!俺は、好きでこの仕事をやってんだよ!!それに、てめぇは爾来に勝てねぇ!!絶対だ!!』






「分かったのなら退いてくれ。死にたくないだろう…。晋助はこの仕事を何だかんだ愛してるんだよ」







『高杉…本当の事を言え。お前、この仕事好きなのか?』

『……き、らいだッ』






「"floral clock"は花時計。あいつは、俺の花だ。美しい花なんだ。逃がさない、晋助には死ぬまで此所で働いてもらう」

「―……。」








『俺を……此所から出して下さい』







「―…ッッ、ふざけんなッッ!!!!!」





話が…話が高杉とかみ合っていない!!
弄ばれてるだけだと…??
ちょっかい出すの好きだって…??
高杉がこの仕事を愛してるだと…!?
死んでも働いてもらう?!
ふざけるな、ふざけるな!!!!





「あいつが、高杉がいつそんな事言ったよ!?
てめぇの花だと???こんな事しといて美しい花だと!!?」





銀時は、爪が皮膚に食い込むのも気にせず力強く刀を握り爾来に向けた。爾来はそれを見てやはり貴様は殺しておこう、と呟いた。銀時は、何も言わず睨み付ける。







高杉…お前は絶対ぇ出してやる。あいつの花だなんて反吐が出る。お前は…、そんな所で咲き続けちゃいけねぇ。誰にも縛られず自由な所で咲いている方がいい…、










「そんな花時計なんざ…俺が狂わせてやる」










*next*
.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ