連載

□第17話
2ページ/2ページ




高杉はというと土方と沖田を気にしながらも、大切な人を探していた。




銀時…銀時。
何処だ??何処にいるんだ!??









「ぐっ…!!」




畳の上にボタボタと血が落ちる。それは、銀時のものであって銀時は畳に刀を刺して倒れないようにした。ハッハッと肩で息をする銀時は、目の前にいる爾来を睨み付ける。




「…良いぞ、その目!!ゾクゾクする。もっと楽しませてくれよ、なぁ…」

「…お前さぁ、よくそんな刀で戦えるな。」




銀時がそう思うのも当たり前である。爾来が使用している刀はやけに持つ所が長い。まるで、槍のようだ、と言ってもいいくらいだ。





ついかさあー、本ッ当に最悪…。
血ィ流しすぎた。
視界がぼやけて殺りずらい。
コイツ、マジ強ぇわ。何であんなにピンピンしてんだよ。まぁ…対した傷ねぇしなぁ。




銀時は、ペッと血を吐き刀を畳から抜き構えた。爾来はニィと笑い銀時に襲い掛かった。




「どうした??さっきまでの勢いは!?」

「っせぇな!!てめぇこそ…そのペラペラ口塞ぎやがれ!!!」




スッと爾来の後ろにまわり銀時は刀を振った。斬った感触は薄々あった。が、かすり傷程度だろう。銀時は奥歯を噛み締めた。刻々と近付いてくる限界にイラついているからだ。高杉の前では平気そうにいたが実際は違った。もう銀時にはあまり体力が残っていないのだった。




待てよ…此所で倒れるな!!持ち堪えろ!!
俺は、あいつを…高杉を助けるために此所へ来たんだろ?!負ける訳にはいかねぇんだ!!




「ハァ…ハァ、俺ァてめぇを倒すまで負けねぇ!!何度でも起き上がり立ち向かっていく!!!」

「やってみろ!!そのうち無駄だと気付く!!」




両者ともその場から走り出した。




「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」




キィィンと刀同士のぶつかり合いが続く。銀時は、爾来の攻撃を刀で受け止めていた。今の銀時にはそれが精一杯なのだ。




まだだ…。コイツは一度だけ隙を作る。ほんの一瞬しかないがそれに懸けるしかない。
奴は、攻撃する事しか頭にない。ということは、腹部あたりがガラ空きだという事だ。隙の一瞬は…一振りが長いとき。その時は、左横腹がガラ空きだ。合図は、持つ位置を少しズラしたとき!!




「……(今だ!!)」

「…引っ掛かったな」




隙を作った爾来に攻撃をしようとした瞬間、爾来が笑った。腹部に当たるはずの刀は刀によって止められた。銀時は、刀は爾来の右手にあるはずだと思ったがよく見ればあんなに長かった刀が通常の長さになっていた。




「なっ!!!」

「今頃気付いたか。この刀は二刀流なんだよ。じゃないと、こんな使いにくい刀など使う訳ないだろう」




そう、爾来の刀は隠し刀であった。通常より長い所を持ち引き抜けば二刀流になるのだった。銀時は、素早く離れようとしたが時既に遅し。刀が二つの刀に挟まれ身動きとれなくなってしまった。爾来は、銀時の腹を蹴り壁に吹き飛ばした。




「…がッ!!」




衝撃が背中、腹部を走り回り銀時は激しく噎せ込んだ。刀を握り締め痛みに堪える銀時。不気味な笑みをつくり銀時に近付く爾来。銀時は、痛みに歪みながらも爾来を睨む。





参ったな…まさか二刀流だったとは…。
畜生…力が入らねぇ。




「じゃあな…坂田銀時。寂しがらなくても良い。いずれ、残りの奴等もお前の元へ逝く」

「……くっ」









「銀時ッッ!!!!!!」









バッと見ると高杉が息を切らして立っていた。走って来た事を物語っている。




「馬、鹿やろッ…!土方から離れるんじゃ……ぐぁぁッ!!!」

「銀時!!」

「自分の立場を考えろ…もういい死ね」




ドスッと左手の甲を刺さる。
そしてもう一つの刀を高く振りあげ銀時に向けて振りおろそうとしたがビタリと爾来の手が止まった。




「……何をしている??晋助」

「……」

「そこを退け」

「…断る」

「退くんだ!!」

「断るッッ!!!!!」




銀時はぼやける視界にうつる高杉の後ろ姿を見つめた。高杉が銀時の前に行き膝立ちをして両手を伸ばし爾来から銀時を守っていた。高杉は、キッと爾来を睨み付け完全否定した。




「爾来…頼む、もうやめてくれ!!」

「高…杉ッ、何言っ…てッ!」

「無理だったんだよ…。此所から逃げれる事事態が…ごめん、銀時」

「晋助…その男から退け」

「いやだ…!!」




銀時は、立てない自分に腹が立ち下唇を噛み締めた。悔しくて情けなくて仕方がないのだ




「…楽しみたいんだ。久し振りに血が騒ぐ」

「…ッ」

「……ハハハ、良い事考えたぞ。坂田銀時」

「……な、に??」

「お前には…もう少し何か凄い"モノ"を感じる」




銀時を見、何か企んでいるのか笑みを浮かべた。そして、それは銀時の前にいる高杉に向けられた。その笑みに何か感じたのか高杉はゾクッと体を震わせた次の瞬間、爾来の手が高杉の左腕を掴み引き寄せた。




「―…ッ!?」




嫌な音が響き渡り、銀時の頬に微かに暖かいものが飛び散った。銀時は…瞬きを忘れ時が止まったようにも思えたその光景を見ていた。赤い液体に染まった爾来の刀。横腹を貫かれた愛しい人。




「…か、はッ」

「本気ではないのだろう??お前は自分の意志で何かを封じ込めてるみたいだが…これで本気になれたか?」

「……じ、ら…ぃ」

「あぁ、晋助。綺麗だ…。お前は赤が似合う。安心しろ…死なせはしない」




ゴホッと高杉は口から血を吐いた。力強く爾来の服を握り締めていたが、それもなくなりズルリと垂れ下がった。




「た…か……す」





銀時に何かが忍び寄る。ユラリユラリと。そして、銀時は声を聞いた。悪魔の囁きに近い声を…。




『力貸してやるよ…銀時。』




ドクリと心が騒ぎ怒りが込み上げてくる。封じ込めていた…白い獣が暴れだす。






「ああああぁああぁぁ゙ぁ゙ぁ゙あ゙ぁ゙!!!!」






守る…守ると言った人を傷付けてしまった。
守ると言ったはずのに破ってしまった!!
許さない…許さない、許さない!!!!
殺す、殺す、殺す、殺してやる…!!!!!





その声にピクリと反応し、うっすらと瞼を開き視界が霞む中、高杉は銀時を見た。





「…ぎ……ッん…、?」





銀時が……哭(な)いている…??
動け…。銀時を抱き締め言いたい。大丈夫だ、と。なのに動きやしない…。









哭いている銀時の声は…、銀時のものであり銀時じゃない、そんな気がした…。









*next*
.
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ