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□第7話




終業式も終えて冬休みに入ったと言うのに、辰馬とヅラに呼ばれた。理由は―…




「金時ぃ、どうしたぁ?
目の下に隈出来とるぜよ。」

「…うるせぇよ。」

「元気もないのぅ」

「黙れ、モジャ毛玉。
だからてめぇは、毛玉なんだ」

「アッハッハッハ〜。泣いていい…??」

「銀時、今日はイブだぞ。
楽しもうではないか」


そう…今日は12月24日。クリスマスイブだからだ。





第7話





流石クリスマスの前日だ…。人がいっぱいいる…。




「にしても金時、おんしその隈どうしたんじゃ?」

「隈もあるけど…腫れてんだよバカ本」




あの日…晋助が消えて一日中泣いた。
涙が止まらなかった…。
今までの事を思い出す度悲しくなる…。
昨日もまた泣いた…。




ホラ、また一筋の涙が…。




「金時ぃ?!何で泣いとんじゃあ?!」

「目にゴミが入ったんだよ。
(どんだけ乙女なんだよ?)」




自分に自嘲し、涙をすぐ拭った。
泣いたってあいつが戻ってくる訳がない…。



「…にしても、やっぱ寒ぃな」

「そうだな…」




だけど今の俺には丁度良い。
頭を冷やそう…。




『でっけーツリーだな』

『だろ。此処クリスマスになると綺麗なんだぜ。
回りのライトも全部消されてイヴからクリスマスになったら点火すんだ…』

『そーなのか。見てみてぇなぁ…』

『見れるよ…きっと。
その時は一緒に見ような』

『……あぁ』




一緒に見たかったなぁ…。
行ってみるかなぁ…。
行ってもいいか…。
なんか、一人で行きたい気分だ。




お前の分まで見てくるよ。
次会えたら、一緒に見に行こうな…。




まだ晋助がこの世から消えてないかもしれない…。意識不明の重体でも助かるかもしれないし…。俺は…"助かる"と信じたい。




「銀時昨日のニュース見たか?」

「悪ぃ、俺行きたい場所あんだ。じゃあな」

「おい、銀時!!最後まで人の話聞かんかぁ!」



説教は聞きたきゃねぇよ。
俺は早く行かなくちゃいけねぇんだよ。
時間がねぇじゃねぇか!!
今の時刻は、11時40分。
あと、20分経つと商店街の明かりは全て消されツリーが綺麗に光る。
前も一人で見に行った。
カップルが多かったが気にしなかった。




「う…人多いなぁ。まぁ、まだそんなにいねぇから良い方か」




回りはガヤガヤと賑やかだ。
家族で見に来た人も居れば
カップルで見に来た人も居た。




途中ツリーの近くで小さな子供が座り込んでいた…。迷子だろうか…?
肩がやや震えている。




「どうした坊主。母ちゃんと父ちゃんと離れたのか??」




その小さな男の子は顔を上げた…。
………??
あれ、なんか前もこんなのがあった気がする。そう思っていたがその子の声によって我に返った。




「うん…。」

「そうか。よし、兄ちゃんに任せろ」




人もまだそんなに多くはない。
探しやすい方だ…。
小さい子供を抱き抱え肩に乗せた…。
いわゆる肩車だ。
背は高い方だから見つかるか…その親が見つけてくれるか…だ。





「ホラ、母ちゃん見えるか??」

「…ぁ!居た」

「見つけんの得意だな」




俺は少々驚き、笑いながらその親の元に行った。




「ありがとうございます!助かりました。
ホラ、ありがとうは…??」

「ありがとう、髪がクルクル の兄ちゃん」

「こ、コラ。どうもすみません」

「いや、良いんですよ。じゃあな、坊主」




手を繋いで帰っていく親子を見送った。
にしても、さっきの坊主…。
人のコンプレックスを言うとはな…。




「いつの間にか人が増えたな」




……。
さっきから引っ掛かる。
あの子みたいにずっと前しゃがみ込んでいる人に話しかけたような気がする…。
曖昧だが…。




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