拍手
□第7話
そういえば…さっきの子に言われた言葉…初めてじゃない気がする。
ふと、何かが蘇った。
『よぉ、どうした?そんな所に座り込んで』
『別に…。つか、あんた何』
『まぁ口が悪い事!!って、あーあ唇の端切れてんじゃん。喧嘩したの??』
『…親とちょっとな。』
『ホラ、丁度絆創膏持ってっから使えよ』
『……ども』
あ…、昔にこんな事があった気がする。
俺が丁度大学2年になってからの春…此処で誰かに話しかけたんだ。
『そっかぁ。勉強の事でモメたのか』
『あぁ…言われなくたってやってるっつーんだよ。』
『まぁまぁ、そうカッカッすんなよ。』
『へいへい。あ、もうこんな時間か。』
『なんか、あんの?』
『あぁ、今から塾だ』
『頑張るなぁ。』
『親に負けたくねぇからな。』
『応援してるよ』
『あぁ、ありがとな。
髪がクルクルの兄ちゃんよ』
…思い出した。そっか、だから…
あの時、懐かしく感じたんだ。
本人は覚えてないと思うけど…。
【ご来店の皆様お待たせしました。
あと2分で商店街の明かりが消えツリーが美しく光ります。近くなったら、カウントを始めますので良かったらそれに合わせてみて下さい】
…と放送が流れた。
「……あと2分―…??」
人込みの隙間からさっきの子供のようにしゃがみ込んでいる人が見えた…。
なんだぁ??
また、迷子かなんかか?
幼い子じゃなさそうだな…。
「……。」
なら大丈夫だろうと思っていたが…自然にそいつの方へ足を運ぶ…。まるで誰かに誘われてるかのように。
【さぁ、あと30秒です。
15秒になりましたらカウントを始めます。】
人込みを抜けながらツリーの近くへ…。
不意に晋助と話た事が頭を過ぎった…。
『銀時、さっきの話なんだよ』
『クリスマスの話だよ。この前、見に行ったデカいツリー覚えてる??』
『あぁ、クリスマスになると綺麗なんだろ?』
【カウントダウン始めます。15…14…13…】
『簡単に説明するとね。
付き合っていたカップルが―…』
鼓動がだんだん早くなる。俺は、その人に近付いた。気付いてないらしく俯いたまま…。
近くにあった店の中からニュースが聞こえる…。
『嬉しいニュースです。
意識不明だった少【5…4…3…2…1…0!!!】
カウントが終わった瞬間…
全ての店の明かり…さっきまで流れていたニュースが消え…真っ暗な商店街を一本のデカいツリーが照らした…。
回りからは歓声を上げている。
カップルはカップルらしくその場でキスしている…。家族は家族らしく幸せそうに笑っている…。幸せが満ちて…ツリーがキラキラ光っている。とても綺麗だ…。
「綺麗だな…。なぁ…、」
「晋助…?」
しゃがみ込んでいた人が顔を上げ俺を見た瞬間目を見開いた。
「まだ完治じゃないくせに、
何してんだよ…バカ。」
「…ぎッ……銀、時」
「約束、覚えててくれたんだ」
「忘れる訳ねぇだろ…」
俺は、小さな彼に触り思いっきり抱き締めた。
あぁ…やっと聞けた。
愛しい彼の声が…。
やっと触れた。
愛しい彼に―…。
『離れ離れになったけど前から約束していたツリーの場所で感動の再開をしたっていう話だよ…。』
*next*
.
[表紙へ戻る]
ゲームブックを検索