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□第8話



『何処だ??此処…真っ暗だ』

『晋助…』

『先生!!お帰りなさい』

『…晋助、お別れしに来たんですよ』

『え?……ッ!?』




高杉の正面にいた筈の松陽が少しずつ遠ざかって行く。松陽の元へ走って行くがいっこうに追いつかず逆にだんだんと離れていく。




『待って先生!!!お別れってどうゆう事だよ?!』

『貴方達といた時間はとても楽しかったですよ。一生忘れません』

『先生ッ!!!』





どうして…??
どうして……!??
行かないで…松陽先生ッッ!!!



つぅ…と一筋の涙が流れてその冷たさに目が覚める。高杉は「夢」か、と思い涙を拭い起き上がった。隣で寝ていた銀時と桂はもうその場に居なかった。






第8話






「銀時、ヅラ、おはよう」

「…ッ!!高、杉ッ!…おはよう」

「…??」




銀時が動揺し無理に笑顔を作ったのを、疑問を抱えた高杉はヅラが後ろに隠している紙を見つけ奪いとった。




「た、高杉!!よせ!!!」

「二人揃って何隠してんだよ。ラブレターか何かかぁ??…………え??」




“吉田松陽は、死んだ。よって村塾を閉め何日日後に壊す事となった。皆、早めにバラバラになるよう従え。”




嘘だ……。



「し…ん、だ??先、生が……?」



嘘だ…嘘だ、嘘だッッ!!!!



「なんで!!どうして!!!?なんで先生がッッ」

「高杉!!落ち着け!!」

「嫌、だ!!先生!!!松陽先生ッ!」

「落ち着けって!!!!」




銀時に強く抱き締められた高杉は目を見開いた。銀時を見ると目尻が赤い。銀時だけじゃなく、桂も赤かった。




「俺も、ヅラも、嘘だって信じたい。夢だって思いたい。だけどなッ!これは真実なんだよ…高杉ッ!」

「だってッ……銀、ッ。先、生が…あいつ等にな、にしたってんだ……よぉ!!」

「分からない……」

「先生も居なくなって俺達はこれから、どう生きて行けば良いんだよッ!!先生に拾われた俺達はッッ!!!」




親がいる子供は、理由は言わずに銀時と桂が親の元へ返さしたのだろう。だが、残っているのは3人含めて僅か8人。8人の子供達は松陽によって拾われた子供達…。




「…先生からの手紙が入ってたんだ」

「え…」

「ホラ……」



“皆さんへ
何も言わずに皆さんの元を離れてすみません。そのうえ帰れないですみません。皆さんといた日々はとても大切な一時でした。いつの日か、皆さんと山に登り楽しく遊んでいる可愛い教え子を見ていると幸せでしたし同時にそんな日がもう訪れない事がとても残念でした。が、後悔などありません。今までありがとうございました。そして、この塾は閉める事になりましたが親がいる子達は親の元に帰り、いない子達は私の部屋にあるお金を持ち少し離れた廃寺に住んだら良いでしょう…。側にいて上げられなくてすみませんね。私は皆さんが大好きです。どうか、幸せになって下さい。それが、私の願いです。
吉田 松陽”





ポタッとボールペンで書かれた紙の上に水滴が一つ落ち、また一つ落ち書かれた文字が滲んでいった。




『私は、今日の事は一生忘れません。』


『私は、幸せ者ですよ。大好きな子供達に囲まれてるのだから…』




山に登った日に松陽が言った事を思い出した高杉は、涙が止まらなかった。




「うっ……ッ先生ぇ!!」

「高杉…」




先生……貴方は、本当にこの世界が好きでしたか??貴方を殺した世界が好きでしたか??
好きな青空も今は天人の船が飛んでいる…侍の国だった時のモノは何一つ残っちゃいない。全てが変わったんだ。そんな、そんな世界でも貴方は「好き」だと言った。本当にそうなんですか…??




「銀、時……俺ぁ、天人をこの世界から追い出してやる。このまま好き勝手にさせてたまるか。……反撃だ」

「高杉、俺もそれには反対しない。天人の奴等を追い出そうではないか!」

「銀時……お前は??」

「…当たり前に、やってやろーじゃねぇか。
だけど、今は仲間集めともっと強くなってからだ。…人間を見下しているのも今の内だ、糞野郎共」





銀時達の話を聞いていた5人の子供達も「俺も」「僕も」 と言い反撃の仲間に入った。そして、松陽の部屋からお金を取り出した。8人でやっていけるお金はあった。8人全員は今まで過ごした塾を見渡しその塾を出て行った。







先生…俺達の行動を許して下さい。貴方の願いを踏みにじる事になるけど…俺達は天人相手に立ち向かうつもりだ。だから…見守っていて欲しい、です…。






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