拍手

□第5話




「む…??坂本、周りの人達が逃げてるぞ。何かあったのだろうか?」

「分からんのぉ。じゃが、只事じゃないみたいじゃな」

「行くぞ、坂本」

「よし来た」




桂と坂本は、客と逆方向を走って行った。
すると、少し向こうに見覚えのある姿があった。高杉より少し低いがあまり代わらない男の子の後ろ姿。ツッコミ担当の新八だ。




「新八、銀時はどうした??」

「桂さん!!それに坂本さん!!実は、神楽ちゃんが高杉さん連れてどっか行っちゃて銀さんと一緒に探してたんですけど放れたんです。それに、この騒ぎが何だか分からなくて」

「なるほどリーダーが…。とにかく3人を探そう」

「はい!!」




桂は、坂本、新八と共に銀時達を探しに再び走り出した。





第5話





煙が黙々と出ていたのもやっとなくなって来た。神楽は、どうしたら良いか分からずそのまま座り込んでいた。すると、後ろから声がした。




「何しょんぼりしてんの神楽??」

「銀ちゃ……」

「高杉くんは助かったのに悲しいのかな??」

「…晋助ぇぇ!!!!」




後ろを振り向くと銀時と高杉の姿があった。どうやら刀が振り落とされる直後、銀時が高杉を抱えて避けたのだろう。神楽は高杉に抱き付き喜んだ。高杉は、そんな神楽に優しく頭を撫でてやった。




「…貴様、邪魔するでない。もう少しで殺れたというのに…」

「前にも高杉を襲った連中か」

「いかにも。我らにとってそいつは邪魔だからな」

「邪魔、ねえ。怖い、の間違いじゃねえのぉ?」

「邪魔するのなら貴様も殺してやる」

「きゃ〜怖い怖い……ん?」




木刀を握り抜き出すと左袖が小さく引っ張られた感があり、横を向くと不安げで見つめる高杉の姿。左袖を掴む手は密かに震えていた。




「さ……か、た」

「…大丈夫だって。お前は…俺が守るから」

「―…っ」





―…今の言葉、聞いた覚えがある。





そう思っていた直後銀時に腕を引っ張られ我に返った。さっき自分がいた所に目をやると天人一人がでかい刀で地面を刺していた。あのまま銀時に引っ張られてなかったら高杉は殺られていた。




「ホアッチャアァァァァ!!!!」




少し向こうからは、神楽の叫びと共に何体かが吹っ飛んでいくのを目にした。紫色の傘で殴ったりしていた。そして、少し前にいる銀髪の男は近付いてくる天人に木刀で振りかざし倒して行くがすぐに起き上がり銀時達に襲いかかってくる。




「……っ」




俺には…何で奴等が俺を狙ってくるのかが全く分からない。だけど…これだけは分かる。俺のせいで坂田達を巻込んでいるんだ。俺が、居なくなれば…坂田達に危害を与えずに済む。




高杉は、そう思いつきゆっくり後退りをした。徐々に銀時から距離を作り後ろへ走った。それに遅れて気付いた銀時は、高杉を追いかけた。




「馬鹿!!俺から放れるな!!」

「坂田!!来るな俺がいたらお前等は―…」

「わざわざ死にに来てくれるのを感謝するぜ」

「…ぁッ!」




高杉の目の前に天人が立ちはだかって刀を振り上げるところを見て銀時は、無我夢中で走った。高杉は、次こそ斬られると思い目を見開いたが、一瞬何かが高杉の前へと入って行った。それは、見知っている銀時の後ろ姿。高杉はさらに目を大きく見開いた。




「坂―…ッ」




目の前で銀時が斬られ血が宙に散らばった。
高杉は、唖然としふとだいぶ前にもこんなことがあった気がした。





『死ねぇ、高杉晋助ッ』

『しまっ…』




斬られる寸前に自分の前に立ちはだかる自分より一回り大きい銀髪の男性。自分を庇った銀髪の男は、3日間休むという怪我を負った。




『高杉、そんな顔すんなよ。言っただろ??お前は俺が守るって』

『……無理しやがって』

『守ると決めたからには筋通すのが当たり前だろ』

『ありがとな…"銀時"』





たった今、銀時達が闘っていた天人と同じように高杉自身も銀時達と一緒に闘っていた。
重なった…。昔に庇った銀時と今庇った銀時の後ろ姿が一致した。そのせいなのか、今までの記憶が一気に頭の中で再生される。
そして、銀時が斬られた間がまるでスローモーションのようでたった今、銀時が冷たい地面に倒れ、散らばった血が高杉の頬にベチャリとついた。まだ…ほんの少し生温かい。




「………。」




遠くで銀時を呼ぶ神楽の声がしたが天人に邪魔されて近付く事が出来なかった。高杉はというと、倒れた銀時を瞬きを忘れてしまうぐらいで見ていた。銀時から出てくる紅い血。そして、動かない銀時を見て高杉は全身を震わせ頭を左右にゆっくりと振った。





「…き、、、ぎん。……銀、時」





ずっと『坂田』と呼んでいた高杉が『銀時』と呼んだ。その声が神楽のところに届き記憶を戻したのだと分かった。




「…〜ッッ」




銀時の元へ足を動かし近付きたかったがそれは叶わなかった。天人に捕まったからだ。なんとかして銀時の元へ行こうと暴れるがそれも長くは持たず、天人の中で中心人物と思われる周りの天人より少し大きい天人に肩越しで抱えられた。




「用はすんだ。違う所でこいつを片付けるぞ」

「放、せよ!!!あいつが…ッ」





あいつが―…





「退くぞ」

『おぉ』





待てよ!!
少しでいい、あいつに触れさせてくれ。
あいつが、そう簡単に殺られる訳ねぇ!!
だけど、息しているか確かめさせてくれよ!!




暴れても、叩いても当たり前にビクともしない。だんだん離れて行く距離。だんだん小さくなっていく銀髪の男―。





俺のせいで…。
また、俺のせいだ…。










「―ッ、銀時ィィィィィ!!!!」











暗闇で聞こえた。愛しい彼が…必死になって俺の名前を呼ぶ声が―…。だけど、そこから何も聞こえなくなった。そして…俺の意識もまた暗闇へ墜ちていった。






*next*
.

[表紙へ戻る]

ゲームブックを検索



©フォレストページ