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□第6話
視界が歪む中、あいつの歪んだ顔が微かに見えた。俺に近付こうとしたあいつが天人に捕まって連れて行かれるのを黙ってみるしかなかった…。目の前は遂に真っ暗になったが、高杉の声だけははっきりと聞こえた…。
第6話
「う…」
「銀さん!!!僕が分かりますか?!」
「……新、八??」
「良かったぁ!!」
銀時は、周りを見るといつも生活している万事屋の中だと分かった。起き上がろうとしたが新八に止められ大人しく寝転ぶ事にした。新八に続いて神楽、桂、坂本が銀時を覗き込む。
「……。」
……何、かが……足りない。
さっきまで身近にいた人物が…いない。
「高、杉は…??」
「…ごめんなさい、銀ちゃん。晋助連れて行かれちゃったヨ。私…何も出来なかった。」
「…ッそう、か。神楽のせいじゃねぇよ。守れなかった俺が悪いんだ。」
「銀さん…」
銀時は、じっと天井を睨み起き上がる。桂に止められたが振り払い立ち上がったが余りの痛さにバランスが崩れ坂本に支えられるという羽目となった。銀時は、悔しくて歯をくいしばりソファに座らせるよう坂本に頼んだ。坂本は、何も言わず銀時の言う通りソファへと連れて行った。
「無理するな銀時。傷が深いんだぞ」
「そうじゃ。無理はいかんぜよ、金時」
「じゃあ、高杉どうするんだよ。まさか見捨てる気か??」
「そうは言ってないだろう。だいたい奴等の居場所が分からないではないか」
「……ッ」
確かに…奴等の場所が分からない限り高杉を助けられない。それでも…早く、天人から救い出したい。今頃、あいつは何されているのかも分からない。そんな時に落ち着いていられるかよ!!!
『―ッ、銀時ィィィィィ!!!!』
高杉の叫び声が頭の中で繰り返される。
今にも、あの景色が思い出される…高杉が天人に連れ去られる手前の光景。
あぁ…やっぱり俺って、あいつの事が好きなんだな。自ら高杉を引き離しても気になってしょうがなかった。
「……フ」
「…金時???」
「ハハ、ハ。馬鹿だよな、俺って。最初は、怪我が治るまで面倒見るだけで良かったんだ…だけど日が経つにつれて時々見せる悲しい横顔を見て守ってやりたいって思ってきた。」
「……銀さん」
「こう思ったのも二回目だ。昔にも戦争中、仲間が死ぬ度に自分を責め悲しむあいつを守りたいと何度も思った。」
銀時は、ハァと溜め息をついて背も垂れに頭を授け天井を見上げた。少し汚れがあるなぁと頭の隅で思いながら話を続けた。
「意地っ張りで、確かに強い…だけど、あいつ心はあまり強くないからよ」
ぽつりと呟いた言葉は静かな空気に吸い込まれるように消えていった。5人ともどうすればいいのか分からず黙り込んでいた。
「…なんすか、この空気」
「……え」
横を振り向くと河上万斉と来島また子が突っ立っていた。静まった沈黙が一気に緩んで銀時達はバカみたいに口をポカーンと開けていた。そして先に我に返った新八がいつも通りのツッコミに入った。
「って…アンタ等何勝手に入って来てるんすか!!!」
「細かい事はどうでも良いっす!!」
「いやいや良くないから!!」
「白夜叉…晋助の居場所なら知っているぞ」
「…ッ!!?なん…」
「さっき私達の仲間が気を失った晋助様を近くの森に連れて行くのを見たらしいっす。」
「変じゃのお。それならおまん達が高杉を助けに行けばいい筈じゃのに、何故わし等に教える??」
坂本の質問は確かだと4人も思っているだろう。万斉が坂本の質問に頷き話し始めた。
「実は、結構前から知っていた。晋助が主達と居ることを。本当は晋助を返してもらいに行こうと思ったがあまりにも晋助が楽しそうに笑っていたからやめていたでござる」
「お前等が気付いてないと思ってなかったぜ。…場所が分かったのならこっちのもんだ。…ヅラ、辰馬」
「「あぁ」」
銀時と桂は木刀を帯に差し込み、坂本は拳銃を胸元に収め立ち上がり万斉達の横を通りすぎる。
「銀さん…僕達も」
「…ここは、俺達だけで行かせてくれ。あいつは…高杉は、"仲間"の俺達が助けだす」
「…銀ちゃん」
「悪いな。……おめぇ等も此所で待ってろ。高杉の迎えに来た、のと同じだろ」
「すまない」
銀時は、万斉の胸元を軽く叩き玄関に向かっていくのを桂と坂本も続き、その3人を万斉は見送った。
「銀時、さっきも言ったが…」
「無理はするな、だろ。大丈夫だ。たかが天人数人に二度殺られるかよ。…それに」
「あぁ…お前が言いたい事は分かる。なぁ、坂本」
「そうじゃな。分かる」
「「「仲間を勝手に連れて行かれちゃあ…虫の居所が悪ぃ」」」
俺達が歩く道は、バラバラだけど…心はいつまでも一緒だ。そうだろ…高杉。いつも4人でいた俺達は1人でも外れたらいけねぇ仲なんだよ。だから、おめぇは俺達が助け出す、必ず。
もう少しの辛抱だ。
それまで我慢してくれ、高杉。
*next*
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