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□第2話
放課後…。
高杉は、景色を眺め曲を聴きながら口笛を吹いていた。高杉が口笛を吹くのは、結構珍しい事であった。気分が良い時しか吹かないからだ。
「…おい」
「……うおッ!!?」
音量を大きくして聴いていたため、人が近付いてくるのに高杉は肩を掴まれ小さな悲鳴を零してしまった。振り向けば同じクラスの土方だった。なんだ、お前かよ。と高杉は呟いた。
「なんかようか??」
「お前今、暇…??」
土方は、部活で使う道義を着ていた。土方は、剣道部に入っている。走ってきたのか息を乱している。
関わらない方が身のためだな…。
どうせ、夜にそろばん塾があるし。
「悪…」
「暇だな、よし。頼みがある」
「いや…塾が…」
「19時からだろ」
「……ぅ」
なら行くぞ、と土方は良い手を引かれつれて来られた場所は剣道場。竹刀で叩く音が鳴り響いている。
第2話
「おい、土方。俺にどうしろっつーんだ」
「助っ人が欲しかったんだ。ん、竹刀持て」
「んな事言ってもよぉ」
「中学ん時、剣道部だったんだろ。頼む」
「ち…仕方ねぇな」
二年の相手をしてくれ、と頼まれ高杉はチラリと二年を見つめた。だが、高杉の目付きが怖くピシリと固まってしまった。彼は、普通に見たつもりなんだが二年の彼等にとっては怖いのだ。土方に指示され、二年の一人が前に出て構えた。高杉は、溜め息をつき竹刀を受け取った。ブレザーを端らへんに放り投げ、構えた。土方の合図と共に両者共動き竹刀がぶつかる。バシンッと音がし相手の手から竹刀が床に落ちる。
「…なんつーんだ??」
「…え??」
「もっと肩の力を抜け、そして構えが甘ぇぞ」
「―…はい!!気をつけます」
「次、俺お願いしますッ」
一人が言うと周りの生徒も俺も、俺も、と騒ぎ出す。高杉は、手を額にあて頭を抱える。なんで俺こんな事してんだ、と。
「ハァ…。かかって来い…その代わり俺ァ優しくないぜ?」
そう笑うと周りから歓声があふれる。結局高杉は、二年だけじゃなく一年全員の相手をした。頬に流れた汗を手の甲で拭った。
「あ〜らら。なんか騒がしいかと思ったら高杉くんじゃん」
「―…?!ぎ、銀八?!」
『ちわッ!!』
周りの生徒が銀八に挨拶をした。疑問符を浮かべる高杉に、土方は「あ」っと呟き高杉の肩に手をポンと置いた。
「あ、銀八が一応剣道の顧問だ」
ポカーンッと口を開けていると出入口にいた銀八がニヤリと口元を緩めた。なんだか強そうだね、と呟き剣道場に入った。
「高杉くーん、どうせなら俺の相手してよ」
「―…ハッ、上等じゃねぇか」
高杉はフッと笑い土方から防着をかり、銀八は奥の部屋から自分の防着を持って来た。
あの日、俺はお前に殺されお前も命をたった
本気を出して戦った事もなかったもんな…。
白夜叉だったお前と、鬼兵隊総督だった俺。
どちらが強かったか決めようじゃねぇか…。
互い防着を着用すると竹刀を構え、土方の合図がする前に両者共動き出しさっき同様竹刀のぶつかる音が道場に響き渡った。一・二年や土方たちも高杉の本当の強さがわかった。そして、自分たちにとって銀八は顧問であり強いはずなのに、高杉とほぼ互角なのである。
「…す、すげぇ」
土方は、思った事を声に出していた。だが、部員は唖然としていた。二人は剣道じゃなく本格的にやり合っていた。剣道というものは、相手の隙を見つけるまで、または隙をつくるまであまり動かない。しかし、今の二人は積極的に攻めて行き、ついには鋭い音が響き勝負が決まった。…引き分け、の筈なのだが高杉は頭にやられるのを嫌がり左腕で竹刀を受け止めていた。右に握っている竹刀は銀八の横腹に当たっていた。
「バッカ!!!左腕でとめる奴があるか!!!痛ぇのに」
「うるせぇよ、つか痛くねぇし。頑丈なんでな…(痛ぇに決まってんだろ。それに頭だと即死じゃねぇか)」
これは、あくまで高杉が竹刀を刀とし勝負しただけである。江戸時代の時を例えただけの事だ。
「ちっ、てめぇなんかに引き分けかよ」
「うーん、餓鬼と引き分けって…」
「子供扱いすんな!!」
「アハハハ…ん?どうした、おめぇ等」
気付くと土方たちが茫然としていた。そして全員揃って"……剣道じゃねぇじゃん、それ!!"と叫び緊張していた空気が一気に和らぎ笑い声に包まれた。
「ん??晋助、左腕が痛むのですか??」
「へ!?あ…いや、痛くな……い゙!!?」
「ホラ、痛いんじゃないですか!!」
あれからそのまま塾へ行った高杉は、先生の松陽に左腕を握られてしまい痛いのだとバレてしまった。
「授業が終わるまで我慢できますか??」
「え?あ…はい」
「では、終わったら手当てしましょうね」
「いや、いいで…」
「いいですね??」
「……はい」
ニコッと笑い他の生徒の方へ歩いていく後ろ姿を高杉は見つめ、目を細めた。
「……」
吉田松陽。江戸時代、幕府に殺された銀時、桂、高杉の恩師であった。その恩師を此所の塾で出会った。無論、覚えているはずはない。
高杉は、どうせなら"普通"として生まれて来たかった。過去の事なんかなく"普通の学生"として…。と思っていた。一人だけ前世の記憶があるなんて不気味で不安だからだ。
そんな事を思っていると授業が終わり次々と生徒が帰って行き松陽と二人となった。松陽は救急箱を用意し高杉に手当てをしていく。
「はい、出来ましたよ。何してこうなったんですか」
「ありがとうございます…いゃ、剣道で…」
「フフ、晋助は見た目によらず危なっかしいんですね」
「―…ッ」
江戸の時の松陽と似た言葉を言われ涙が出そうになるのを必死に堪え、礼を言うと走って出て行った。
なんだっつーんだよ!!
どうして…なんで俺だけ前世の記憶を覚えてんだよ!!こんなの、なければ良かったのに
そう思いながら塾から出ると思わず驚く、夜は寒いというのに土方が立っていたのだ。
「…やっと来やがった」
「…何でいんだよ?!」
「ちょっと話があってよ」
「…え」
土方がいつもより真剣な表情で見て来る面が…江戸の土方とダブって見えた…。
*next*
剣道のルールはあまり分からず私の予想で勝手に書いたものなので見逃して下さい;;
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