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□第3話






先程の事が頭から離れない…。
現実のままでいい…だけど、







やっぱり夢であって欲しい―…。







もうこんな事を何度思っているだろうか。









第3話









『ちょっと話があってよ』




土方から発された言葉に高杉は、は??と聞き直せば土方はもう一度同じ事を呟いた。高杉は、溜め息をつき土方を見つめた。




「寒いのに馬鹿か…」

「るせぇ、って何処行くんだよ?!」

「来いよ…。こっから俺ん家近ぇから」

「……ぉ、おぉ」




こんな寒い中じゃ話なんて聞いてられるかよ、と心の中でぼやきながら道を歩く。着くまで二人は無言で一切口を聞かなかった。
マンションに付けば高杉は、土方を招き温かい紅茶を差し出した。土方は、未だ高杉の部屋を見渡している。まるで、初めて彼女が彼氏の部屋に入ったみたいな仕草だ。




「案外綺麗なんだな」

「お前に褒められても嬉しくない」




高杉は、両手でコップを包み、立ち上がる湯気をフーッと吹き掛けた。猫舌であるからそうそう熱いモノを飲めれない。土方は、フッと笑い、…あいつか。と呟いた。




「―…銀八、だったら??」

「……ひじ、かた??」




さっきよりも低い声で囁かれた言葉に高杉は、ピクリッと反応する。そして、紅茶から目の前に座っている土方に視線を送る。




「違ったな…。"万事屋"だったら嬉しかったか??」

「―…ッ!?」




高杉は、耳を疑った。前世の土方が銀時を呼ぶ時に言っていた言葉。驚きが隠せない高杉は、ただ目を見開くしかなかった。嫌な汗が背中に伝う。




「な、何言ってんだよ?頭どっかに打ったか?」

「おいおい、今更誤魔化すなよ。鬼兵隊総督…高杉晋助」

「―ッおま、え!!」




過去を覚えているのは自分だけだと思っていた高杉だったが、違った。土方もまた過去を覚えている一人であった。




「可哀相にな…。最愛の奴に殺られ自ら経った奴に忘れられるなんて」

「…なんで俺が覚えていると分かった?」

「前々から、もしかしたらと思っていたけど、今日の勝負を見て分かった。構えも戦いっぷりも同じだったからな」

「……ッ」




顔を歪ませ、土方から目を逸す。どうしたらいいのか分からなかったのだ。その様子を見ていた土方は、笑う事を堪えていたがプハッと笑った。




「なんつー顔してんだよ。過去の事じゃねぇか。今は、友達だろ??敵なんかじゃねぇよ…」

「…クク、そうだな。これからも仲良くしよーぜぇ…元副長さん??」

「……そうだな、元指名手配人」




二人で声を揃えて笑った。高杉は、不思議な事に今まで考えていたモヤモヤが消えて楽になった気がしていた。そんな時、土方は立ち上がった。高杉は、帰るのか??と首を傾げ問うと土方は「だけど…」と小さく呟いた。
あまりにも小さな声に聞き取れなかった高杉は、聞き直そうとした途端、視界は天井で土方が見下ろしてくる。




「ひじ…」

「俺もお前が好きだ!!昔も今も」

「―…え」

「万事…銀八なんかに渡さねぇ」

「土方ッ、何言って……!?」




その後の言葉が出なかった。土方にキスされたからだ。前世以来の感触に高杉は身を震わせ、抵抗しようともがいたが手首を押さえ付けられ、するにできなかった。




「んぅ…んん……ッッはぁ」




やっと解放され、噎せ荒い息遣いをしている高杉に土方は、咄嗟に謝った。




「ごめん…自分をコントロールできなかった。でもよ…」

「…はぁ、はぁ…ひじ、た?」

「俺は…本気だからな」

「―…ッ」




そう告げると土方は、高杉の号室から出て行き暗闇へと消えていった。高杉は、座り込んだまま閉まったドアを眺めている。
そして、ゆっくり片手で自分の唇を触った。数分経っているというのにも関わらず、まだ土方の唇の感触が残っていた。





あいつが…俺を??昔も…今も?
嗚呼…頭が痛い。ズキズキする…。
また…悩みが増えちまった。
頭が痛い…気持ち悪い…。
もう、何も考えれないぐらい、
頭の整理ができていない…。






高杉は、垂れ下がる糸が切れた人形のように崩れ、床にゴロリッと倒れた。







「なん…なんだよ………」







こんな状況なのに、思い浮かぶのは…、









銀髪の男の顔だった…。









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