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□第5話








最近…避けられているような気がする。
多分…気のせいではない。







銀八に避けられている―…。







どうして?











第5話












「どうした?」

「いや、なんでもねぇよ」




高杉がそう言うと土方は、ふぅん、と言った。
ただ、何もない事ないくせに、と言いたげな表情をしている。そう思うのも無理ない。
今日の高杉は銀八ばかり見ているのだから。




「帰り…ファミレス行かね?」

「…告白?」

「阿呆か。…で行くのか?行かねぇのか?」

「行く」




でもよー、と頭を掻きながら土方は呟いた。
それに高杉は、首を傾げる。じっと見つめられ、さらに疑問。
すると、耳元まで口を近付け囁いた。




「俺がお前を好きなこと忘れんなよ?」

「―……ッ///」

「男は時に狼に変わるからな、小羊ちゃん?」

「…て、てめッ」




ニヤっと笑った土方を後輩が呼んだ。
いきなり副キャプテンの表情になり、教室のドアで待っている後輩たちの元へ走っていったのだった。
来週の土曜に試合があるから、それの話だろう、と高杉は思った。




「……」




アイツ、驚いた表情してたな…。
無理もねぇよ、銀八なのに銀時と呼ばれちゃあ…誰だってびっくりする。




高杉は、この前の屋上の階段での出来事を思い出していた。それからだ、銀八の様子がおかしくなったのは…。
高杉を避け始めたのだ。理由など分からない




「理由、ぐらい聞かせろよ……バカ」




頬杖をつき、外で同じ教師の坂本と話している銀八を窓から見つめた。
呟いた声は、暴れる沖田と神楽によってかき消されたのだった。




「………はぁ」




高杉が溜め息をつく一方、銀八もまた溜め息をついていた。我らの銀魂高校のハタ校長がいつもダラダラしている銀八と坂本に花壇の周りの草抜きを頼んだのだ。




「やってらんねぇなぁ、辰馬くん」

「そうじゃのぅ…金時く、…ぶへぇ」

「銀八、な。その頭かち割るぞバカヤロー」




銀八は、引っこ抜いた草を坂本の顔面に放り投げた。一向に金時から銀八にならないからだ。一文字もあっていない。
だが、いつもより迫力がなかった。何処と無く上の空だ。
銀八は、黙って黙々と草を抜いた。抜くのは良いのだが、それを一つの場所に纏めずあちらこちらに投げていたのだった。
抜いた草が坂本の頭に何個か乗る。それを払い落とさず坂本は、口を開けていた。




「しかし、珍しいのぉ。おんしが言われた通りに草むしりするとは」

「はぁ……そーですか」




何処をどう見てやる気があるように見える訳?お前の目は節穴ですかバカヤロー。
普通に銀さん落ち込んでるじゃん。




銀八は、また溜め息をつきブチッと草を抜き取った。銀八の頭の中は、生徒の高杉で一杯であった。
すると、近くから自分を呼ぶ声に振り向くとドキリッと心臓が高ぶったのだった。
そこに立っていたのは、教え子であり、頭の中に一杯であった高杉だった。その隣りには土方が立っていた…。




「……たか、すぎ」

「…草抜きご苦労様。…じゃあな」

「………あ、あぁ」

「銀八…俺、何かしたか?」




しかし、一向に動こうとしない高杉を見上げると目が合い問われた。いずれ聞かれるだろう、と思っていた銀八は言葉を詰まらせる。どう返せばいいのか分からないのだ。
クク…ッと笑い声が聞こえてくる。高杉が、俯いて笑っているのだ。




「冗談。何、真に受けてんだよ」

「……」

「じゃ、また明日」




そう言うと高杉は背を向けて歩き出した。
土方は、銀八の顔をずっと見つめていた。何か探っているかのような冷たい瞳で見て来る。
何やってんだよ、と高杉が土方に叫ぶと、目を細め、銀八に礼をすると土方は背をむけ、今行くっと言い小走りで向かっていった。




「辰馬ぁ」

「……なんじゃ?」

「彼等、青春真っ最中だなぁ。羨ましいねぇ」

「………金時が壊れたきに」




もやもやとした思いを抱え、銀八は歩いて門を出ていく二人の後ろ姿を見つめていたのだった。
強い風が吹き、クルクルの天然パーマが揺れる。あちらこちらに散らばった草がコロコロと自由に散らばっていくのだった。












「避けられちゃあ、気になるよな」

「……あぁ。それもいきなりだからよ」




ファミレスに着いた二人は、ドリンクを飲むついでに夕飯を住ましておこうと和食を注文したのだった。
和食が来るまで、二人共ドリンクを飲んでいた。高杉は、微妙にふてくされた表情をし、ストローを口に咥えていた。




「やっぱ思い出し始めてんじゃねぇの?」

「………分かんね」




だからって…避ける必要はあるのか?
分からなくなってきた…銀八という奴が…。
何がしたい?…言ってくれなきゃ分からないじゃねぇか。




そう思っていると注文した和食が来て、高杉は考えるのを一旦やめた。
友である土方とその話以外楽しく話してはいたが、銀八が頭から離れてくれる事はなかったのだった。
ファミレスを出たのは、午後20時。案外そこに居た事のに両者共々びっくりだ。




「ん?……あれ銀八と坂本先生じゃね?」

「……え」




土方が指差す方向に高杉も視線を向ける。
確かに、そこには銀八と坂本が居た。誰と話しているのか楽しそうに笑っている。
丁度死角で話している相手が見えない。
すると、坂本が二人の視線を感じたのかこちらに向いた。表情が明るくなり両手を振り上げて叫んだのだった。




「高杉ぃぃぃ、土方ぁあぁ何しちゅーかぁぁ」

「「(なんつー、恥知らず!)」」




気付かれては見てみぬフリが出来ず、高杉たちは二人に近付いて行ったのだ。
銀八は、坂本の横腹をつついた。まるで、余計な事すんなよ、と言っているようだった。




「ぎ…銀八、何してんだ?」

「え?………ごーこん?」

「………え」




フラリと高杉は、よろけた。耳を疑ったが、確かに銀八の口から出た言葉だ。
土方も高杉同様で目を見開いている。普通なら合コンなどに驚く事ではない。




「銀八さんに辰馬さん、皆待ってるから早く」

「あいあーい。そうゆう事だから」

「ま…待って、銀八!」




女性が店の中に引っ込み、銀八は向かおうとする。服を掴もうと手を出したら、触るな!と怒鳴られ、周りの人たちが一旦振り向いたが、すぐに歩いていく。
高杉は、ビクっと肩を揺らし手を止め、坂本と土方も銀八に驚いていた。目を丸くして銀八の後ろ姿を見つめる。




「高杉…俺が何しようとお前には関係ない事だよな」

「………ッ」

「大体、こんな時間まで何してんだよ?…餓鬼は早く帰れ」

「……銀八!そんな言い方、」

「土方…良いんだ。…悪かったな、銀八。もう、口出ししねぇから。下校も真直ぐ帰っから」




ごめん、っともう一度謝り、高杉は銀八たちに背を向け歩いていった。
土方は、ギロッと銀八を睨み高杉を追いかけて行ったのだった。坂本は、隣りにいる銀八を見つめた。




「あんな言い方は傷付くんじゃなかか?」

「……時には厳しくするのが教師だろ」

「……」

「行くぞ」




そう言うと銀八は店の中へと入っていった。
小さくなる生徒の後ろ姿を一目見て、店へ入って行ったのだった。











「……高杉。大丈夫か?」

「あ?大丈夫だ。…じゃあな、土方」

「……あ、あぁ」




いつもの場所で別れる道にくると、土方と高杉は別れた。いや、高杉が一方的に別れたのだった。




「……」




…そうか。
銀八も彼女作って結婚する年だもんな。
めでたい事じゃねぇか。そうなったら祝ってやらねぇと。…そうだな。
ケーキでも買ってやるか…アイツは昔から苺大盛りケーキが好きだったしな。




「………ッ」




ポロリッと涙が頬を伝い、地面に落ちた。
拭っても拭っても流れてくるソレ。
すると、いきなり腕を掴まれ強い力に引き寄せられる。ドンッと何かにぶつかり、後ろから包み込まれる。




「やっぱり…泣いてるじゃねぇか」

「………ひじ、かた」

「泣きたいなら泣け。ただし、一人で泣くんじゃねぇよ」

「……ッ」




別れたあと、心配して駆け付けた土方は高杉を見つけた。泣いてるのを分かり後ろから抱き締めたのだった。
その優しさに高杉は溢れ出す涙を止まるまで流した。









好きなのに…お前に届かない。
手を伸ばしても、声を上げても…











この思いはお前に届かない―…。













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