07/18の日記

05:12
鰤プチ連載A時の運
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西流魂街一地区
「潤林安」


西流魂街で一番治安が良いと言われている地区でも犯罪は起きるし、虚も時々現れる…らしい。
その虚がどんなものでどれくらい禍々しい存在かは、婆ちゃんから聞いて知っていた。
知っていたんだ。
それに俺には霊力がある。
だからもし出会ってしまっても、戦えないにしろ逃げることは出来る…はずだった。




その日いつものように街をぶらぶら歩いていたら、いつものようにどこに潜んでいたんだかわからない仲間たちに連れられ空き地に来ていた。
「なぁなぁ!知ってたか冬獅郎!」
「…何をだ」
「陸ン家の裏にあるデッケェ山あんだろ、あそこ出るらしいぜ」
「……」
「あ!くっだんねぇ…って今思ったろ!でもマジなんだってば〜」行方不明者がどーの
死神が調査に来てただの
どーでも良いだろ。そんなこと。
それなりに暮らしていければいいんだから。

それに…虚の気配はない。
ただの噂だろ。


虚が出ると騒いでいる仲間たちは、夕方その山に探検に行くことにしたらしい。
俺は巻き込まれる前に早々にその場を去った。
後ろから「冬獅郎も参加だかんなー!!」
と聞こえてきた声は聞かないことにする。


太陽が中天を少し過ぎた辺り。
少年はとある山道を歩いていた。
時折漏れる溜め息は多少の苦労で培ってきたように熟練して聞こえてくる。

やっぱり何もいねぇな。

立ち止まり、ぐるりと木々を見回しても虚の気配はおろかゴロツキの類いもいないようだ。
今一度溜め息をつく。

きっと明日には探検してきた成果を聞かされるのだろうと思うと、溜め息が漏れる。
何気に少年の苦労は絶えないようだ。


帰るかと歩みを再開させたときだった。


ピリ


今まで感じなかった感覚が足を止めると同時に、後ろから平坦で抑揚のない声が聞こえた。

「うぉーいそこの白髪少年よ死にたくなければ今すぐ止まれよ」



それが、出会いだった。

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