07/23の日記

00:53
鰤プチ連載F薫風感じる湖のそばで
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「おまッ…なんだそれは!」
「あ?」


ありがたく(男の場合思惑通りとも言うが)少年と老婆宅に一宿一飯の礼についた男は、温かい夕餉を食べ終わり、今は少年の部屋で就寝の準備を…つまり濃藍の着物を脱いでいた。

何の予備動作もなく大声を上げられた男は訝しげに少年を見やると、着物を脱ぎ露わになった男の左手を見て、少年は眉間にしわを寄せる暇なく目を見開いて固まっていた。
あ、眉間にしわ発生。

「あーこれか?」

男は今気付いたという風に傷のある左手を振った。

「振るんじゃねぇ!馬鹿かお前は!今薬持ってくるから待ってろッ」

そんな急がなくてもいいんだけどなーもう塞がってるし。
それにしても馬鹿って…ヒドくね?


バタバタと走り去って行った少年を見送りながら、男はそう思ったがなんともむず痒く感じる好意を素直に受けることにした。

それから色んなものを手にして戻ってきた少年は素早く処置に入った。
ぬるま湯を浸した布で腕にこびりついていた乾血を拭い、軟膏を傷に塗って綺麗な包帯を巻く。
その間、少年の顔が盛大にしかめられていたのは言うまでもない。

「おー器用なもんだな」
ありがとな、少年。


男は感慨深げに巻かれた包帯を撫でて礼を言うが、少年の反応は薄く依然眉間にしわ健在。

「お前なぁ、こんなちっちぇときからンなしわここに拵えてると嫁来ねぇぞ?」

オラオラと掛け声のように言いながら眉間のしわをぐりぐり押す。

「身長と嫁は関係ねぇだろ!」

パシリと男の手を払いながら反論するがいかんせん相手が悪い。
反論すればするだけいいように遊ばれるだけだ。

少年の反応に目を細めて楽しげな男と、げそりと若干の疲れを見せる少年の夜は更けていく。


「あ、そだ少年言い忘れてたが」

なんだよまだ何かあるのかよと半目で促す少年。

「この傷な虚につけられたモンじゃねぇからな」
「は?」
「いやー少年が『俺が捕まったせいで虚に』なんて心配してたらあれだなーと思ってよ」

ぽかんとした表情を見せたあと、「心配なんかするかッ」と少年が耳を赤くするまであと少し。

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