「レーン」
「はーい」
マスターの呼び声にレンは元気に返事をする。
読んでいた本を閉じればパタパタとスリッパの音を立てながらマスターの元へと書けよる。
「なんですかー?」
「これ、バレンタインのチョコ」
「わぁ、ありがとうございますっ」
差し出されたものを見て嬉しそうな顔を浮かべて受け取れば、ソファーに座って綺麗にラッピングされた箱を大事そうにぎゅっと抱きしめた後、丁寧に包みを開けていく。
箱を開ければ手作りのハート型のチョコレート。
レンは「いただきます」と手を合わせてチョコを持って一口かじる。
「…………」
「ど、どうかな?」
「……お、おいしいです」
チョコの味は甘いはずなのに何故かしょっぱく、涙目で笑顔を浮かべる。
それを見たマスターは嘘だとレンからチョコを奪い取り、一口食べる。
何ともいえない味にレンを見れば苦笑いを浮かべているレンがいてため息をつく。
「……作り直す」
「だ、大丈夫です!!あのっ、僕食べますっ」
「おなか壊すよっ」
「大丈夫です。お返し楽しみにしててくださいね」
せっかく作ってくれたのにとチョコを奪い取って微笑んだ。
マスターは肩をすくめて胃薬を用意しておこうと思った。