めだ箱

□雪が降る日
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黒神コンツェルンは、世界経済における重要な企業。
その家の子として生まれためだかちゃん、真黒さんは、クリスマスとなると、世界から有力者たちを集めたパーティに参加しなければならない。
俺も今まで何度か参加したことがある。もちろん、めだかちゃんの友達ということでの特別参加だ。
ただ、今回のパーティの参加理由は違った。

「はぁ、」

会場を見回しため息をつく。
どこを見てもヒトヒトヒト。めだかちゃんの周りにも、当然、真黒さんの周りにも。
特に、あの軍艦塔から珍しく出てきた真黒さんの周りは人だかりがすさまじかった。

特に多いのは女。
一生懸命、真黒さんの気を引こうとしているが、残念でした。あの人の恋人は・・・
その、俺、なんだから。

なんて、俺らしくもない。
顔に手を当てながらもう一度ため息を吐く。
だって、そうだろ?いくら俺が好きで、真黒さんも俺が好きって言ってくれたって所詮、俺は男で真黒さんも男。
きれいな女性に言い寄られたら真黒さんでもふらっと・・・

考えることに夢中になっていたせいか俺は真黒さんを見失っていた。

「あれ、どこに・・・」

あの人だかりができる人だ。すぐに見つかると思っていたが、なかなか見つけられない。

「まさか・・・」


ほかの女とどこかへ・・・


俺は呆然とその場に立ち尽くした。

そりゃそうか、俺よりきれいな女の人のほうがよっぽどいいよな。

悲観になりあまり周りを見ずに後ろへふらふらとしていたら誰かにぶつかってしまった。

「ッ・・」

ぶつかったのはパーティの招待客だろう、小太りな男。
そいつの持っていたグラスが俺にぶつかり、中に入っていた飲み物が俺にかかった。

「す、すみません」

「よそ見をしていたのは私もだ。私は濡れていないから大丈夫だ。それより君のほうが大丈夫かい?」

「大丈夫です」

男は持っていたハンカチで俺の濡れた所を拭こうとしていた。

「だ、大丈夫ですから」

濡れた所は太ももらへん。こんな所を誰かに拭いてもらうなんてごめんだ。
俺は大丈夫と手を振り離れようとしたが、男はそれを拒み、俺の手を取り引き寄せた。

「あぁ、きれいなスーツが台無しだ。ほらこっちへおいで、新しいのを買ってあげよう」

結構です!つか、これはめだかちゃんが選んだ真黒さんのお古ですから、俺より黒神家の人に謝ってください!
って言いたかったが、男の手が俺の脚に伸びてきて言葉を失った。

「ちょ、やめて・・」

「そこまでにしてもらおうか」

突然の第3者の声に男の動きが止まった。

「ま、くろ・・さん」

真黒さんはすぐさま俺と男の間に分け入り、俺を男から隠すように立ちはだかった。

「これは、黒神さんのお連れの方でしたか。し、失礼しました!」

言うより早く、男はその場を立ち去った。

「善吉君、こっち」

「え、ちょ・・」

俺は引きずられるようにして真黒さんの後についていった。

 
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