めだ箱

□勉強の後は
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「そう、そこにはAを代入して」

「ふんふん、そうか!だから答えがこう・・」

今は使われなくなった旧校舎『軍艦塔』
俺、人吉 善吉は、その一室でお勉強の真っ最中だったりする。

「そうそう。善吉くんは教えがいのある生徒で僕はうれしいよ」

「そんな、教えてくれる先生が優秀だからですよ」

目の前で俺に勉強を教えてくれているのは、この軍艦塔の管理人で、つい先日 恋人になった黒神 真黒。
育成のスペシャリストだけあって、頭の悪い俺でもわかるように教えてくれる。

何故、今、勉強会みたいなことをしているのか?
それはな、俺の通っている箱庭学園にも、とうとう、例の鬱になる期間がやってきたんだ。


そう、『前期末テスト』。


誰もが鬱になり、勉強で知恵熱なんか出したり、必死に点数を上げるために時間を使う、魔の期間。
いつもならめだかちゃんに教えてもらうところだが、如何せん、めだかちゃんが勉強を教えようとすると、止めはね払い、計算ミスなど、問題を解く方ではなく、簡単なミスをしない。という、ありがた迷惑なものしか教えてくれない。
そこで、今回は、恋人となった真黒さんに教えてもらおうとわざわざ旧校舎まで訪ねたわけだ。

「今回のテストは高得点が期待できるね」

「うう、プレッシャーをかけないでくださいよ〜」

次の問題を解きながら頭の上から降ってくる真黒さんの声はよく耳に入る。

ん?頭の上から?
真黒さんは前の席に座って・・・

不思議に思い顔を上げると、目の前にはだれもおらず、すぐ隣に真黒さんの顔があった。

「ッ!!」

驚きのあまり息をのむとすぐ近くにある顔に俺は顔を赤くした。

「ん?どうかしたかい?」

「べ、別になんでも・・」

近すぎる距離に心臓が今にも破裂しそうで、問題にむきあっても文字が頭に入ってこず、動揺しまくりであった。

「ちょっとまった。ここ、間違ってるよ」

「うえ!?」

間違ってるところを指摘されたためか、すぐ近くから聞こえた声のためか、裏返った声で叫んでしまった。
真黒さんは気付いていないのか、どこが間違っているのか、指でさしていた。

「ほら、ここ」

バクバクと壊れるんじゃないかと思うほど心臓がうるさい。
隣にいる真黒さんにも絶対に聞こえている。
気付いているのかいないのか、彼はより一層近づいてくる。

「善吉くん?」

「ッ〜〜!」

すぐ耳元で彼の囁く声が聞こえる。
低いテノールの声はとても心地よく、つい、もっと聞きいていたと思ってしまった。

そう、それがいけなかったんだ。
そんなこと、考えるべきじゃなかったんだ。
なぜなら、俺たちは恋人同士。
2人きりの密室。
そんな中、耳元で彼がささやいたら・・・

「感じちゃった?」

「!?」

図星を刺されてしまった。
思わず握っていたペンを床に落とすほど、俺は動揺してしまった。

「な、な、な・・」

「ふふふ、きみは本当に分かりやすくてかわいいね」

「真黒さん!!」

「でも、そんな君が僕は大好きだよ」

うぅ、そんなこと言われたら言い返せないってわかってるのに、真黒さんは本当にずるい。

「そうだ、今度のテストでクラスで3番以内に入ってごらん」

「?」

何故そんなことを言うのかわからなかったが、真黒さんに教えてもらっている以上、ひどい点数は取ることはできない。
だから、勿論、頑張るつもりだったが、次の彼の言葉で、俺は必死にならざるを得なくなった。




(きみのの望むご褒美をあげるよ)




その後、必死になって勉強した結果、俺はクラスで1位、普通科オンリーで3位という、とんでもない成績を打ち立てたのであった。


おわれ
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