頂き物
□せめて・・・
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「・・・霧が深いな・・・・。」
俺が来たのは、“アリス”の森。一人になって考えがまとまり易いかもしれないし、誰もい
ない所へ行きたかった。
「・・・っ・・・!」
「・・・・?」
奥の方から、声が聞こえた・・・。誰かいるのか・・・?
「・・たぁっ!・・それっ!」
「!!」
ソラ・・・!?
「てやっ!・・・ぅわっ!・・・・はぁっ、はぁっ・・・・。」
今までハートレスと戦っていたらしい。頬や腕についている傷が痛々しいと思った。
「・・たく・・・グーフィーやドナルドとははぐれちゃうし・・・。・・・何処だろ、ここ・・・?
おーいっ、グーフィー!ドナルドー!どこだー!?・・・はぁ・・・。・・・・!?」
「・・・?」
何か・・・いる。・・・何だ・・・・?
「・・カイリ・・・!?良かった、助かってたんだ・・・カイリ・・・良かった・・・。」
カイリだと・・・?ありえない、今も魔女の城で囚われているのに・・・!確信を持ち、じっと眼を凝らしてソラの行く先を見てみると・・・カイリは消え、その代わりに植物があった。あの植物・・・!変な匂いを出している。まさかその匂いで幻を・・・?
そう思っていたら、ソラの脚に植物の蔦が絡まった。
「カイリ・・・。・・・わぁあ!・・・し、植物っ・・・!?このっ・・・・!」
ソラは蔦に脚をとられながらも、キーブレードを上手く使い植物から逃れていた。
「はぁっ・・・・あれ?カイリ・・・カイリ?・・・・もしかして・・・幻、だったのかな・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・ソラ・・・・・。」
「・・・・・!今度は誰だ!俺はもう動かないからな!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・リク?・・・・・・リクも、幻なのか・・・?」
「・・・・・・・・・・・。」
俺は、何も喋らなかった。いや、喋れなかった。幻は喋らない。ここに俺がいると、ソラが理解してしまったら・・・・・。俺はもう、魔女の城へ帰れない。ソラの傍にずっといたいと思ってしまう。
「・・・幻でもいい・・・いいから・・・傍にいてよ・・・。」
「・・・!・・・・・・・・・。」
俺の姿を見て、へなへなと地面へ座り込んでしまったソラは今にも泣きそうな顔をしていた。俺がそうさせてしまった、ソラに悲しい思いをさせてしまった・・・・。
「・・・リク・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
俺は何も言わず、ソラの横に座った。ソラは驚いて、俺の顔をじっと見ていた。
「・・・・・・なぁ、リク・・・。・・・俺、みんなでいた、あの島の事夢に見るんだ。
カイリ、リク、ワッカ達・・・・・皆いた。でも・・・あの島は、もうない。
・・・カイリたちも、何処にいるのか分からない。・・・・・俺が、一番心配してたのは・・・
・・・・リク、お前だよ・・・。」
「!?」
「ずっと一緒にいた。喧嘩して、カイリに怒られて、仲直りしてみんなで笑って・・・。
リクも俺も、カイリの事が好きで良く“どっちがカイリにふさわしい”とか喧嘩したっけ。」
「・・・・・・・。」
「・・リク・・・幻でもいい。リクなら、幻でも幽霊でも・・って、幽霊はやっぱりいやだな。・・・リクは死んでないから。幻でも、リクがいい。・・・リク・・・。」
「っ・・・・・!」
俺は気が付いたらソラを抱きしめていた。
眼の端に写ったのは、さっきの植物が急に枯れてきていた所だった。そして、それにつられるように霧も段々と薄くなってしまった・・・。
「リ・・・・ク・・・?・・・リクっ・・!リク、嫌だ!ずっと一緒にいて、幻でもいいから!消えないで!リクっ・・・!」
ソラは、俺の胸に顔をつけ、腕にしがみ付いて泣いていた。