めだ箱

□雪が降る日
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連れてこられたのは会場から離れたところにある個室。

俺をベッドに座らせ、真黒さんはタオルを取りに行った。

「あの、ま・・」

「善吉君」

俺の言葉を真黒さんが遮って話し始めた。

「どうして助けを呼ばなかったんだい?」

「え?」

「僕じゃ頼りない?」

「そんな」

「じゃあどうして?」


どうして?だって、あなたが先にいなくなったんです。


探しても見つからなくて


捨てられたのかと不安になって


声も出なくて


怖くて


「ご・めん・・なさい」

俺の口から出てきたのはか細い謝罪。
真黒さんはそんな言葉を求めているわけじゃないのはわかってる。でも、口に出したら本当に真黒さんがいなくなりそうで怖くて・・・

今にも泣きだしそうだった俺を真黒さんは優しく抱きしめてくれた。

「僕はね、君がほかの女の人についていってしまうんじゃないかって心配なんだ」

「え?」

「この通り僕の体はすでに僕自身のものじゃなくなってしまっている」

「そんなこと」

「でも、僕は君を愛し続けるよ。君が離れていこうと」

「真黒さん・・」

俺はとうとう泣き出してしまった。
真黒さんの存在を確かめるように強く抱きしめ、それにこたえるように真黒さんも抱きしめ返してくれて。

「真黒さん、俺も、俺も愛してます!絶対にあなたから離れたりしません」

「ありがとう」



その夜は静かに雪が降った。

音を吸収し、外の世界との縁を切る。

無音の雪。

俺たちの存在を隠すように、雪は降り続けた。

END 
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