めだ箱

□遊園地でWデート!
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人吉くんたちと別れてすぐ、あたしは、あたしの手を握り締めて前を歩いている彼女に聞いた。

「あ、あの!これじゃ、Wデートって言わないんじゃないですか?」

此処まで一緒に来たのはいいが、来て早々、2手に別れてしまったらそれはもはや、ただのデートである。

「ん?なんだ、そんなことを気にしておったのか?もがなは4人で行動したかったのか?」

「!!」

いつもとは違う、2人のときだけに呼んでくれる名前で呼ばれ、ドキッとした。
それに、

「私と2人じゃ楽しくないの?」

という幻聴が聞こえそうなかわいらしい、それでいてどこか思いつめた表情で言われてしまったものだから、あたしは顔を真っ赤にしながら首を横に振った。

「そ、そんなことないです!あたしも会長と、2人きりのほうが、その、う、嬉しい・・です」

自分でも分かるくらい顔に熱が集中しているのがわかる。
そのせいで口から出る言葉もどんどん小さくなってしまったが、やはりこの人には はっきり聞こえているようで、満面の笑みで返された。

「そうか!よかったぞ!それと、2人きりの時は敬語はいらぬと言っておろう。名前もだ」

「そ、そうだったね、めだかちゃん」

まだまだ慣れない名前呼び。
それでも目の前の綺麗な人は満面の笑みを浮かべ、あたしをやさしく包んでくれる。
包まれた瞬間、彼女の優しい匂いがあたしを落ち着かせてくれる。
こういうとき、あたしはこの人が好きなんだ、と改めて実感する。

「よし、それでは今日はどこに行こうか!」

ずっと包まれていたいと思う感触も、やがては離れる。

此処は公共の場なんだ。あたしは何をしていた!?

後から羞恥心に襲われるが、それも過ぎたこと。
どこに行こうかと1人胸を躍らせている彼女を見ると、そんなことどうでもよく思えてくる。

「前に来た時は迷路に行きましたから、そうですね・・」

遊園地の地図を一緒に覗き込みながらどこに行こうかと2人で悩む。
すると、どこからか楽しげな音楽が流れてきた。

「何やら楽しそうな曲だな」

「あ、あそこから流れてるみたいですね」

もがな が指さした先には、馬や馬車、小動物や花が回る、珍しいメリーゴーランド。
周りには小さい子だけでなく、カップルなども大勢集まって楽しんでいた。

「ほー、馬や馬車だけでなく動物に花まであるのか。これはまた、メルヘンなメリーゴーランドだな」

メルヘン。地図にあるメリーゴーランドの名前もフェアリーカルーセルと書かれていた。
よく見れば、柄の部分には妖精が遊んでいる堀が施されていた。

「でも楽しそうですね」

「あぁ」

愉快な曲想にまわりの愉しそうな声。
それが相まってみているこちらまで愉しい気持ちにさせてくれる。

「行くか!」

「え、」

戸惑っていたあたしの手をめだかちゃんはぎゅっと握りしめ、メリーゴーランドの方へと向かった。


 
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