めだ箱

□貴方という存在
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彼、雲仙 冥利に俺の秘密を知られてからどれだけの日が経っただろう。
毎日毎日続くセクハラ。
それに耐える日々が続いた。
最初はいやだった。彼のことも嫌いだった。
それがいつの間にか好意に代わり、恋に代わった。
いつからだろうか。


「そんなの、最初からに決まってんだろ」


「え?」


今、俺たちは学校の一部を改造して作られた小さな部屋でティータイムをしていた。
冥利は俺の膝の上で菓子を頬張っている。
その姿はまるでリスの様。
ほっぺたに詰め込んだお菓子が無性に彼を可愛く映していた。


「最初から?それは、いつの最初のことを指している?」


「最初っからだよ」





俺がお前を女だと知ったとき



俺がお前と話したとき



俺とお前が会ったとき



俺がお前を見つけたとき





「これらすべての最初が俺とお前の関係の始まりだ」


「・・・」


この人はいつから俺を知っていたのだろうか?
そして、いつから俺を見ていてくれたのだろうか。
最初は女だと知らなかったはず。
男だと思ってもなお、彼は俺を見ていてくれていたのだろうか。


「善吉」


名前を呼ばれ、肩が跳ねる。


「俺はな、どんなお前でも好きだし、愛する自信がある」


「・・・」


「それが人吉善吉という俺のもの、かわいいかわいい俺の女だ」


「可愛い言うな」


俺がムッとしながら応えると、膝の上の彼はカラカラと笑い、またお菓子に手を伸ばす。


でも、彼が言うことが本当なら、嬉しい。
俺も、いや、私も、あんたなら最初から好きになれるかな。

end
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