見上げた空は青かった。
□7 飛ぶものは落ちる
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「もしもし…」
耳元に届いたノイズの音を聞きながら、電話に出た私は向こう側の相手の対応を待つ。
いつまでも待ってもでない相手にしびれをきらし、耳から遠ざけた瞬間、小さく笑うような声が聞こえた。
「…なに?」
こっちが待っているのに出ないとは、何様のつもりだ。
言葉が喉まで出てこようとした瞬間、再び電話越しから声が届く。
『こんばんは。せっかちなところは相変わらずだね。エミちゃん。」
ピタリと、動きが止まった。
頭の中で、優しく沁み込んでいくその声を私は知っている。
「…孝さん?」
脳裏に蘇ったその姿と、その声は私の問いに小さく同意を示した。
『そうだよ。連絡が遅くなってゴメンね…』
「…ゴメンって…」
電話越しでも分かる、申し訳なさそうに言う彼の姿が容易に想像できたが、自分の脳内を占めるのは疑問ばかりだ。
「なんで…」
冷静になれない。
今のこの状況を、理解することも、受け入れることもできない。
軽いパニック状態だ。
『…まあ、パニックになることは分かっていたけどさ。僕の話を静かに聞いてくれるかな?』
時間がない、そう言葉を零した叔父の言葉に、ハッとする。
そうだ。
この時間、誰かこの部屋に来るかも分からないし、この状態を誰かに見張られているかもしれないのだ。
深呼吸をして、小さく息を零した私は、腹を括った。
ここにきた以上、逃げも隠れもできないのだ。
「…うん。分かったよ。」
その言葉に、安堵の息を零した孝はゆっくりと口を開いた。
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