君はトランキライザー

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ズシにジュースを買いに行かせるウイングの行動は私への問いかけを確実に行うことを意味していて。
廊下にあるソファーへと腰を下ろした彼の隣に座った私は、早速質問を向けた彼の言葉に耳を傾けた。



「―――まず…初めに。きみは、どこで【念】の存在を覚えたんですか?」
「……六つの頃、師から見込まれて教え込まれたものです。」



念に関しては、全て把握済みだ。
私の前から消えたアキナさんの教えは、確実だったので…何も心配することはないけども。
そんな私の言葉が意外だったのか、驚いた表情を浮かべるウイングさんを見ながら、口を開く。


「―――貴方が心配するようなことは、ゴンとキルアには何もしていませんよ。―――それでも、彼らはやはり鋭いからはぐらかすのは必死ですけども。」


―――彼らは、貴方が隠した念を見つける為、200階に明日確実に行くと思います。



「―――それは…本当ですか?」
「―――残念ながら、本当だと思いますよ」



―――しぶとい餓鬼どもですから。
そんな私の言葉に頷き、苦笑を零した彼は、不思議そうな表情を浮かべ問いかける。


「―――貴方は、念を知りながら…どうしてこの場所で過ごしているんですか?

私が見る限り、貴方の力も能力もそれなりのレベルであるのに…」

「………」





彼が私に向けた先ほどの視線はそのような疑問も含まれていたのだろうか。
――与えられた経験は、確かに己の物として存在しているけれども…。



「―――人を…探しているんです。」


――――私がアキナ師範から与えられた教えを生かせるのは、彼を探すための力になる筈だ。
だったら私は…、私なりの方法で情報を得、金銭を貯め、特訓も行う必要がある。
ゴン達と一緒に旅を続けることで、彼らの成長も見ることができるし、アキナさんを見つけるヒントが転がっているかもしれないのだから。




「―――彼らと一緒だったら、あの人ともいつか会えることができるような気がするんです。」







―――なんて愚かで、勝手で、ふざけた願いなのだろうか。そんな風に願っていても、現実は甘くなく、優しくないということを己は分かっているというのに。





私の発言に、驚きの表情を浮かべていたウイングは『そうですか。』と声を落とし、漆黒の眼を優しい色を宿した。









机上の空論





(―――抑え込んでいた私の戦闘モードに紙を手渡した審判者の判定は見事に200階であった)















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