全てが優しい世界に満ちて

□はじまり
2ページ/2ページ




「―――今日の任務も長くなりそうだね」

『そうですね…』



5代目火影である綱手様から言い渡されたのは、里外で負傷した暗部の手当てと応援のためで。
いつもより早めのスピードで場所に向かっていた私は、隣で走る日比谷に視線を向けた。


「―――そういえば、日比谷さ」
『―――?』
「――イルカ先生と何時から一緒に暮らすの?』
『―――ッ!?』



―――何バカなこと言ってるの!


顔を真っ赤にして、慌てる彼女の姿は可愛らしくて。黒髪を揺らしたまま、走る彼女を見ていた私は、肌を覆った殺気に目を見開いた。




「――――ッ」




頭上から飛ばされたクナイを避け、袖からクナイを取りだした私は離れた場所で敵と刀をまじりあわせる日比谷に視線を向けた。



(―――敵の数が多い…。気がぬけないなあ)



クナイを構え、隠れている敵に足を向けた私は印を組んだ。
早く家に帰ってテレビを見たい。
そんな風に考えていた己の小さな欲はこの日から消え去ってしまうなど、まだこの時の私は知らなくて。








日比谷と離れた自分の判断が誤っていたのか。黒の衣服に見に纏うどこかの里の忍びと交戦していた己の周りを覆ったのは暗闇で。
幻術にかかった、と。一瞬で判断した私の身体を襲ったのは、焼けるような痛み。




―――斬られた。
その瞬間、己の身体が倒れ込んだのは地面の上で。焼き付くような痛みに顔を顰めた己の視界に入ったのは、敵忍の卑しい笑みと遠くで走ってくる日比谷の姿。





「――――エミ…」




彼女の名前を叫ぶ前に、己の視界を覆ったのは全てを覆い尽くすような暗闇だった。



 













.
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ