全てが優しい世界に満ちて

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「---そうなんだあ。」
「---私は良いよ。郁はどうして?」


私の問いに何故か顔を赤らめた彼女は恥ずかしそうに視線をそらしていて。その表情が何故か気になった私は、被ったままのヘルメットを取り外した。



「---ああ、ずるいなあ。私は話したのに、郁は話してくれないんだ。」
「ッ!ああ、もうーーーッ。分かったよ。」



彼女が渋々ながら話したのは昔助けてくれた図書隊員の話で。顔を赤らめる彼女の初心さに思わず笑みが零れた私は、背後で開いた扉の音に目を丸めた。



「ああ、もう。疲れたーーー…て、笠原。その娘だれ?」
「柴崎、おかえり。え、知らない?吉井…」
「---貴方が吉井エミ?」
「え、うん。そうだけど…」


―――己の目の前にいるのは、図書隊の花と言われている柴崎麻子という女性で。
端正な顔立ちの彼女が驚きの表情を浮かべたのは一瞬のことで。そのあと、落ち着いた表情になった彼女は口を開いた。




「---どうして吉井さんがここに…?」
「あ、ちょっとけがしちゃって…見てもらってたの。」
「--そ…うなんだ。全く、笠原も山猿とはいえ、無理はしちゃいけないわよ。」
「---余計な言葉よ!」


憤慨した郁の表情に笑う柴崎さんの笑顔は勤務とは違い本心から笑っているもので。
その笑顔を見つめていた私は、ゆっくりと立ち上がった。




「---じゃ、私、部屋に帰るね。」
「えー、エミ。もう帰るの?ちょっと、部屋でガールズトークしようよー」
「でも、相方さんも戻ってきたみたいだし。」「---私は構わないけど」
「「へ?」」


私服姿の彼女は、上に来ていたジャケットを脱ぎながら、私を振り返る。


「---私も吉井さんとガールズトークしたいんだけど、ダメかな?」



そういって零した彼女の笑顔は作られたものではなく本心から言っているような感じがして。呆けながら頷いた私は、自然と込みあがる笑みを表情に浮かべた。




(---ああ、そっか。私。)





こんな風に女子の友人と普通に話したかったのかもしれない。















――――この日から私と郁、そして柴崎さんは。部屋を通う中になるのである。









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