星屑の欠片

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「―――ッ」


投げ離れたクナイをはじき返し、視線を空中に向けた私は印を組む仮面の男を見据えた。
刀に再びチャクラを練りこみ、己の傍に降り立つ男へと斬りかかる。


(―――風遁、鋭風の術!)


鋭い風のチャクラがチャクラ刀を覆い、普段の刀の長さの倍ほどのチャクラ刀となる。
それは男の体を簡単に切り裂き、小さな煙となり消えた。



(―――影分身…ッ)


視界を覆う煙に舌打ちを零し、男の気配に意識を向けていた私は己の足に触れた掌に目を見開く。


(―――下か…!)



己の足を固定する男の腕を見下ろした瞬間、体を走ったのは全身を痛みつける雷遁系の技で。
痺れと皮膚を覆う鋭い痛みに膝をついた瞬間、己の頭を掴んだのは男の掌。



――めり、骨が軋む音に息を詰まらせた私は、揺れる視界の中、男を見据えた。



(―――土遁・火遁・雷遁…を使うなんて…)



どこの国の忍びか。
この国に雇われるものなのか。


この男との自分の違いは。
圧倒的な実力の差――――。



「―――いいことを教えてやろうか。
…お前と同じように、この王宮に足を踏み入れた奴は腐るほどいた。だが、この術を前にそいつらは…忍びとして使えなくなったみたいだぜ。」


―――唇をゆがめながら男が組んだ印を目にした瞬間――己の体を走ったのは、鋭い痛みとコントロールできないチャクラの感覚。



「―――ぐあああ!」


己の体の中で暴れる己のチャクラがコントロールできなくなり、内部の臓器を傷つけるのを気づいたのはチャクラを目に集めた瞬間。
呼吸が荒くなり、吐血を繰り返す私は揺れる視界の中、男を見据えた。
鬼の仮面――そこから見えた目は憎悪に満ちていて。




「――浅はかなもんだよ。不鬼一族の秘伝の術を受けてのそんな目をするなんてな。

…ま、あんたがどんなに足掻いても、この国は愚か、仲間なんて助けられないな。」



そういって男が向けた視線の先にいたのは。



「―――きば。…赤丸…ヒナタ…」


地面に倒れ、意識を失う仲間の存在。
それを踏みつけながら笑う仮面の集団は影分身だったらしく。
音を立てて消えたそれを見ていた私は、二人に向かって歩いていく鬼の仮面の男を睨みつけた。



(―――触るな…!)


「―――仲間に触れる…な…!」


か細い声は男の耳元に届いていたらしく。
振り返った鬼の仮面の男は、膝をつき、荒く息を吐く私を見つめ肩を竦めた。


「―――なんだ。…まだ動く気?

やめときなよ。あんたのチャクラはもう言うことなんてきかない、体の臓器を壊すどころか
心臓を止めるのも時間の問題だよ。」
「―――黙れ…!…二人に手を出したら…」


―――ただじゃおかない。



零した己の声は鋭く空間の中を切り裂いて。
瞬間、己の前にいたのは鬼の仮面をつけた男の姿。
背筋を這いあがったのは―――恐怖の感情。



「―――ははッ。あんた顔に似合わず結構気が強いんだね。
でも、それも今日まで。」


―――一回、死んでくれる?



男の言葉とともに己の体が空中へ待ったのは男が殴り飛ばしたためで。
塔の周りを覆う建物を壊しながら、森の中へと投げ飛ばされた私の意識はブラックアウト寸前で。
意識を失う前に己の脳裏に蘇ったのは―――鼻筋に古傷を持ち、穏やかに笑うイルカ先生の笑顔で。



―――ああ、何であの時何も言わずに帰ったんだろう。
任務に行く前に、探していた彼に会いに行けなかったんだろう。



(―――本当は…違うんだって言ってほしかっただけなのに。)




―――己の中で暴れるチャクラと痛みに己が出した答えは死という文字で。
溢れ出す後悔という名の感情と―――イルカ先生への想いが己の心を包んで。
ゆっくりと意識が暗転する中――最後に視界に入ったのはまぶしいほどの光だった。



















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