好きなくせに馬鹿みたい
□第九話
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「――席に着いて下さい。授業を始めます。」
ガチャリ、と。
腰にぶら下げている薬品を入れた袋が歩くたびに擦り合わさり、特徴的なガラスの音を響かせるのを感じながら、教卓の上に立ち、顔を上げた雪男の目が自分の姿を捉えると共に、驚きから目を見開く姿に、思わず笑いが込み上げた。
(――よろしく。)
声を発さないまま、口ぱくで四文字の言葉を答えた私は、頬を緩ませ、小さく会釈を返した雪男を見ながら、再び壁に凭れ掛かる。
「はじめまして。対・悪魔薬学を教える奥村雪男です。」
「―ゆきお????…やっぱり!?」
「はい。雪男です。――どうかしましたか?」
このようになることが予想できていたのか、あくまで冷静に燐の質問に答える雪男の発言と今まで知ることのなかった現実が受け止められないのか、立ち上がり百面相を繰り返しているであろう燐は、再び言葉を続ける。
「――や…どどどうしましたじゃねーだろっ!お前が、どうしましたの!?」
「――僕は、どうもしてませんよ。授業中なので静かにしてくださいね。」
にこり、と。穏やかな笑みを浮かべ、実の兄である燐の発言を制止した雪男の対応と自分の今までの行動に我に返ったのか。不満げな表情で腰を下ろした燐を見つめながら、再び視線を前に向けた雪男を見ていたエミは、予想通りの二人の兄弟のやり取りに再び込み上げてきた笑いを抑えた。
第九話
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