レトロスターの降った夜

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―――赤い星が昇る。





肌を撫でる風に、彼女は表情さえ変えず、土地を見下ろしていた。
青空の下、マントの隙間から零れる朱い髪に整った端正な顔立ち。
けれども、その威勢は目を奪われるもので。




「ヨナ姫。そろそろ出発しましょう」
「うん」



菫色の瞳を眇めたまま、声を発する。


「ここは冷えるわね」
「山沿いですから」
「凍りそう……あの頃は私。



白の外がこんなにも寒いってこと知らなかった」






ここは高華王国、そしてかつての私の城、緋龍城は、


当時王の他には世継ぎの皇太子も、世継ぎを産む皇后もなく。



ただ齢十五の皇女が大切に育てられていた。








「レトロスターの降った夜」







prologue。








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