好きなくせに馬鹿みたい

□第四話
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「――今日から、ここに住むことになった木村エミだ。皆、仲良くしてやってくれよ〜」




笑みを浮かべながら言葉を零した獅朗の言葉に、机を囲むように座っていた男性陣は久しぶりのご馳走と酒に目を輝かせながらも、私の存在を歓迎するかのように口々にいらっしゃいと言葉を返しては、手元にプレゼントを置いていく。溢れかえるようになったプレゼントの山を紙袋にしまいこんでいた私は、目の前に現れた影に顔を上げた。








「よ。久しぶり」







口角を上げて笑う少年は、つりあがった目元を和らげ、私に笑顔をみせる。黙ったままだと、相手に睨みをきかせているような、気が強い印象を抱く顔つきと、口調。三年前と変わっていない燐の姿に思わず苦笑が零れそうになったが、あえて言葉には出さず、彼を見上げて言葉を返す。








「久しぶりだね。燐くん。もう三年ぶりになるから…14か15ぐらいになったのかな…。大きくなったね〜…」




「そうだろ〜?やっぱいい男になっただろ?」




あははー。

自画自賛、ともいえる燐の言動は、学校行ってねえけどな、と小ばかにした声で呟く獅朗の一言で打ち砕けてしまい、彼の表情は親から嘘がばれたような、拗ねた表情を浮かべる。

それでも、獅朗のからかいに反論しても無理だと考えたのだろうか。諦めたように小さく息を吐いた燐は私の手元に、何かが入った包みを置いた。






「…はい。俺から。滅多にやらねえんだから、大事に使えよなー」



言葉は荒くても立ち去るときに見えた真っ赤な耳が示す彼の心情は、本心をそのまま表しているように赤く染まっている。


素直じゃないな、と一人考えながら苦笑した私は食堂に広がったいただきます、の声につられるように一人、言葉を零す。



ふいに感じた視線に顔を上げ、その方向へ視線を向けた私の視界に映ったのは、自分を静かに見つめたまま、動きをみせない雪男の姿だった。
















第四話










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