好きなくせに馬鹿みたい

□第八話
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「――新入生代表・奥村雪男。」




カサリ、と。紙を折りたたむ音が彼の傍にあるマイクを通り越して静寂を包む会場内に響く。と、ともに溢れるように零れていく拍手の音が会場内に響き渡るのは、そう時間がかかることではなかった。




「――新入生代表かあ…。すごいね…。雪男くんは」



吐息を零すようなか細い声が口から零れるのを感じながらも、胸に込み上げた温かい感情を噛み締めた私は、バックの中から顔を出し、きょろきょろと視線を動かすトラを見下ろす。

――久しぶりの人ごみに混乱しているのだろうか。


落ち着きを見せない使い魔を宥めようと、言葉を零す。




「―――どうしたの、トラ。何か、変なものでもいたの?」



『――うん。さっきから、誰かの視線を感じるからさ』




すごく、気になってたんだ。


そう言葉を続けた己の使い魔の視線が、次の瞬間、一点に止まると共に、警戒心を表し、背中の毛をゆっくりと逆立たせる様に気づいた私は、彼の視線に合わすように後ろを振り返る。
視界の中、視線を向けた己に笑みを向け、手を振ったのは現在、自分が進学した正十字学園の理事長であると共に、正十字騎士団の祓魔師であるメフィスト・フェレス本人だった。









第八話





























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