好きなくせに馬鹿みたい

□第十一話
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「――あれ、何…?」




(――さあ?僕は知らない。――放っておけば良いんじゃない?)





視界の中で、蛙の形状に良く似た悪魔、[蝦蟇:リーパー]に追われながらも、意地でも負けたくないと言わんばかりに必死に走っている燐と勝呂を見下ろしながら、思わず零れた言葉に相槌を打ったトラの言葉を聞きながら、小さく息を吐いた私は脳裏の中に浮かび上がった先ほどの彼らのやり取りを思い出していた。












★★★★★★★★






「――燐、私が塾にいるのって…やっぱりおかしいよね?」




雪男が立ち去った後に、しえみが呟いた言葉は誰かに同意を求めて欲しいと訴えているもので。彼女の言葉に、思い当たる節があるのか、相槌を打った燐は言葉を零す。





「あ――…。お前、祓魔師(エクソシスト)を目指している訳じゃないんだな。
まーー、いーんじゃねーの?色んな奴がいたって…」




お前のスタイルでいけば、良いじゃん。






意地っ張りで人との関わりに不器用になってしまう彼も、困っている人間を放っておくことができない所は昔から変わっていないらしく。自分が良く知る燐の優しい部分が自然と顔を出しているのを眺めながら、二人を見ていた私は、俯いたまま唇をかみ締め、意を決したように燐を見上げたしえみの姿を見つめた。







「……燐、お友達いる?」





「はあ?」







突拍子のない疑問に目を丸くさせた燐を見たまま、彼に近づくしえみを見つめていた私は思わず零れた笑みを小さくかみ殺した。






多分、彼女は今、ここにいることで自分なりの居場所や存在価値を探しているのだろう。
それが、偶然にもこの心優しい少年の隣だっただけで。真っ直ぐで穏やかな彼女だったら、燐の他にも色んな人との繋がりが持てるはずだ。



そう、エミは思うのだが。




(――なんて、推測ばかりを並べても仕方ないけど…)





顔を赤らめて、しえみを見る燐の初さを眺めていた私は背後から聞こえた冷やかしの声に振り返った。






「イチャコラ イチャコラ…!!

プクク。何やその娘、お前の女か?
世界有数の祓魔塾に女連れとは、よゆーですなあ〜?」


「だから…そーゆーんじゃねーってっ!関係ねーんだよっ!」



嫌みったらしく呟く勝呂は燐にからかいを入れに来ただけなのだろう。すぐに移動できるように、体操服を身に纏っている三人を見ながら彼の言葉に耳を傾ける。







「――じゃあ、何や?お友達か?え?」





「――と…友達…じゃ…ねえ!!」









(――おいおい。少年よ)




顔を赤らめながら、照れを隠すように否定ばかりしているのって、思いっきり肯定しているようなもんですよ。


なんておばさんくさいことを考えながら、勝呂と燐を眺めていた私は、悔しそうに歯を食いしばった後、勝呂を睨みつめた燐の姿を視界に捉える。







「〜〜〜くっそ…、テメーだって……!
いつも取り巻き連れやがってっ!!身内ばかりで固まってんなっ!
カッコ悪ィーんだよっ!!」






(――おお、言い返したっ!)






燐の発言に驚きを隠せないのか、目を丸くした勝呂の背後で、一人噴出した少年は、笑いを噛み殺しながら、燐の言葉に同意を示す。



「いやあ〜…本当、そうやなあ思て…!」



「――何、納得してんのや、志摩っ!」






身内からの裏切りの発言に、さらに怒りを増幅させた勝呂と燐が睨みあっている様は、まるで寅と龍のようなもので。

似とるな、と小さく言葉を零した志摩の言葉を聞きながら、思わず頷いてしまった私は相変わらず睨みあったままの二人を見ながら、小さく息を吐いた。










―――そして、冒頭に至る。













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