星屑の欠片

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ただでさえ、生きづらいこの世界でとんでもない丸印を付けられたのは、私がまだ一歳にも満たないころ。


はたけカカシからトオルさんに伝えられたのは、私の前世の意識を把握するかのような大ガマ仙人の言葉。




―――未来を知る。


(―――うん。…末恐ろしいわ。マジで…)



幼い赤ん坊に、そんな使命を与えるなんて。
とんでもない世界だ。忍びって。



驚きのカミングアウトを受けた私の第二の両親は最初は驚きを覚えていたけども、自分のこどもは大丈夫だろうと、そんな結論に至り、楽観的に笑う二人を見上げながら、思わず椅子から滑り落ちそうになった私は心の中で乾いた笑いを溢した。



絶対日比谷家の二人の主、メンタル半端ねえわ。











「―――お父さん。この薬教えて〜」



そんなこんなで、第二のこの世界を楽しんでいる私の身体もアカデミー入学前の年齢へと成長していた。赤ん坊の頃からの意識は変わっていないけども、前世の医者の知識を生かす仕事に就こうとしていた私が決めたのは
トオルさんと同じ医療忍者である。




強面の私の父は、医療班の第一班長としてこの里を支えているらしい。
そんな話を雪さんが話していたのを聞いた私がとった行動と言えば、医学の書を読みあさることだ。




幸い、トオルさんの部屋は医療忍術の本が溢れかえっているため、暇人な私にはもってこいの場所で。


分からないことなどは、すぐに家にいるトオルさんに聞くことが私の日課となっている。





部屋の机で始末書を書く父の背中を見ながら、六歳にて本を読みあさる親子の関係は不思議なものだ。

現にこのような機会になるのは、一週間に一回だけである。


何故ならば、雪さんが私に医療忍術を教えるトオルさんに気付いた瞬間、ぶち切れたためだ。




忍びの世界は、甘くない。
そのことを幼いながら、痛感している雪さんは己の娘がそのような世界に入ることを少なからず、望んでいないのだと私に向かって言った。


お母さんは自分の家族を亡くしたくない。



トオルさんが任務で家を空けている時、雪さんが話してくれたのは自分の家族のこと。
早くから戦争に身を投げいれた彼女は私ぐらいの年齢で両親を亡くしていたという。





トオルさんと結婚し、私という存在を身ごもっても尚、彼女は生まれてくる子どもが忍びの世界に入ることを極度に恐れていたという。




――明るく活発な雪さんが見せた不安の一部を知った私が溢した言葉は、一つの約束。
第二の世界で、前世の意識を持つ私の存在を愛してくれた二人の両親へ向けた自分の覚悟。



「―――私、生きる。」




六歳のこどもが溢した言葉に目を見開いた雪さんの眼には大量の水分の膜が張っていて。
小さく頷き泣き笑いの表情を見せた彼女の顔を見ていた私は一人、腹をくくったのだ。




(―――死んでたまるか。)




その覚悟と共に、再び医学書を漁っているのである。まる。









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