星屑の欠片

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「―――へくっしゅん!」


月光が降り注ぐ中、溢した己の小さなくしゃみは闇の中に消えていって。
視線を上げた私は、帰路を歩きながら鼻を啜った。
それと同時に胸に込み上げるのは恐怖と不安と緊張の感情で。

「―――明日か…」

最後の中忍試験。そして木の葉崩しの件。
大きな出来事を思い返しながら、小さく息を吐いた私は己の黒髪が揺れるのを見ながら、小さく息を吐いた。
リンカさんの修行と病院での勤務はきつかったけども己にとっては勉強することばかりのもの。無下には出来ぬと必死に治療にあたったのは、確かに経験値として有り難いものばかりだった。

それは、確かに―――己の中で自信として顔を出している感情。



―――――――――――――――






「―――お前は雨隠れの奴とあたったからな」

ヒナタの治療の為に抜けだした私を木の葉病院の受付で呼び出したのはあまり話したことない奈良シカマルで。おおう?と声を出した私の顔を見て呆れたため息をついた彼は声を出す。

「―――お前ってさ、馬鹿なのか頭が良いのか分かんねえ」
「―――ども!」

IQ200の君から言われるなら光栄だよ。そう思い笑った私の顔を見ながら苦笑を浮かべたシカマルは視線を逸らしながら声を落とす。


「―――そういや…」
「―――?」
「怪我した奴は…どうなった?」
「―――ッ」

シカマルの言葉と共に脳裏に蘇ったのは、未だに意識を失ったままのヒナタと神経を壊され忍びとして生きていくのも困難かもしれないリーの存在で。
リンカさんから教えられて、必死に勉強を続けても尚、救えない自分の未熟さ。
それを痛感していた私は怪訝そうな表情でこちらを見るシカマルを見つめた。

「――ひとまず、一命はとりとめているから大丈夫だよ。後は…私や医療班の人が彼らをサポートするだけだから。」

―――五代目、火影となる女性が来るまでの辛抱だと。そう考えていた私の頬に触れたのは少し己より背が高いシカマルの掌で。
キョトンとする己の額を襲った鈍い痛みに思わず蹲った私は額を抑えたまま、彼を睨みつけた。

「―――ちょ…!何するんですか!」
「―――お前さ、もしかしてあれから休んでいないだろう。顔、死んでるぞ」
「―――…ッ」

彼の的確な指摘に口ごもってしまった私の視界に入ったのは、肩を優しく叩く同期の彼の気遣いで。
歩いていく彼を見送っていた私の視界に入ったのは思い出したかのように足を止め、振り返るシカマルの姿。

「――お前の対戦相手、主に毒…使うみたいだ。」
「―――マジ?」
「―――…マジじゃなかったら、忠告しないだろ。お前、途中で抜けたんだしよ。」


ハア。大きな息を吐くシカマルを見つめていた私は、彼から投げられた瓶に驚き慌ててそれをキャッチする。
紫色をしたその液体を眺めていた私は再びシカマルに視線を向けた。

―――コレ、何だ?


「―――チョウジがさ…そいつと当たったんだよ。」
「―――…」
「で、殴られて気絶しなかったら毒で一気に片をつけようと相手は考えたみたいでさ、刀に塗ったそれを刺す前にギブしたから結果オーライだったんだけどさ。

念の為、その液体をチョウジ、取ってたみたいでさ。」

「―――え…」

原作にはない私の人物の登場で物語は少しだけ、道を踏み外したけども。
それでも尚、同期の仲間の成長は著しくて。
瓶に入った少量のそれを握りしめた私は遠くに立つシカマルを見つめた。


「―――シカマルくん」
「―――何だよ。」
「心配してくれてありがとう。」

自然と零れた笑顔に少しだけ驚いた表情をした彼は、私を見て『シカマルで良い』と声を溢していて。頷いた私は、手にしたそれを抱えたまま、研究室へと足を速めた。







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