星屑の欠片

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――――イルカ先生へ返事を返してから、1週間の休暇が与えられた私は、アカデミーで仕事をする彼の仕事が終わるころに、家を出ることが多くなった。
――リンカさんも、今は任務で里を空けており、今は会うことができていないけども。
時期に彼ともまた会うことが増えるだろう。
…まだ自分にも勉強することは溢れるようにあるのだし。



忍服のまま、外を歩いていた私は目の前にいる二人の姿に目を丸めた。


「―――シズネさん!トントンの真珠は一つで十分でしょ!?何、新しいの買っているんですか。」
「名無しの鬼畜ー。」
「……良いから、家に帰りますよ。」




久しぶりに会った彼女は、シズネさんを引きずりながら嬉しそうに笑っていて。
彼女の笑顔に―――ふと言葉が蘇る。



(―――シズネさんが…大切ってことなのかな?)



―――彼女の大切な繋がりなのだろうと。
二人の後姿を見つめていた私は、ゆっくりと空中へと舞い上がった。





――――――




アカデミーの門の前で生徒を見送る姿に気づいたのは私が着いて数分後のことで。
私の姿に笑みを浮かべたイルカ先生の姿に手を挙げた私は目の前で嬉しそうに笑う彼を見つめる。



「―――っ、早かったな。今日は親御さんは…出かけているのか?」
「――はい。二人とも任務に出かけています。…えっと、今日は…大丈夫ですか?」



私の問いに頷いた彼は笑みを浮かべた。
照れたように笑う彼の頬は少し赤くなっており。それを見ながら、嬉しそうに話すイルカ先生の姿に嬉しさを感じた私は、声を発する。



「―――あ、…あの。」
「ん、どうした。日比谷。」
「―――…]



家に行きたい。
ただそれだけを伝えたいのに、恋という名の感情は随分と厄介らしい。
赤くなる頬を隠すように俯いた私は、目の前で不思議そうな視線を向けるイルカ先生の気配を感じながら目を細めた。



「―――…えっと、ですね…。イルカ先生の…」
「…なんだ?」
「……ッ」



しっかりしろ!日比谷エミ!
…精神年齢は前にいるイルカ先生よりはおばさんなんだ。乙女になるな!


高鳴る胸の動悸に唇を噛みしめた私は声を発した。



「―――い、家に行きたいです!」
「……へ。あ、…日比谷の家か?」
「……なんでやねん!!」




噛み合わない会話に思わずノリつっこみをした私は目の前で内容を理解したのか、目を丸めたまま頬を赤く染める彼の姿に思わず驚いてしまって。
傷痕が残る鼻先を掻いた彼は視線を逸らした。
そのさりげない動作に、気分を損ねてしまったのではないのかと不安を覚えた私は言葉を発するイルカ先生を見つめた。





「―――いや。…俺の家、今散らかってるから…」
(―――う、やっぱり断られちゃったか…)
「―――今日はちょっと遠慮してほしい。また次の機会に呼ぶから、それでも良いか?」
「―――はい…。…ッへ?」




――――次の機会。それはイルカ先生が己の希望を受け入れたとのことで。
好きな人の家に行く。ただそれだけな単純な想いに嬉しさを覚えた私は、照れた表情で視線を逸らすイルカ先生を見上げ、頷いた。















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