星屑の欠片
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「―――目が覚めましたか?」
ゆっくりと浮上する意識の中、視界に入ったのは己を見下ろす女性の姿。
銀髪の長い髪が揺れるのを見つめながら視線をゆっくりと動かした私は窓から見える空に目を細めた。
(―――わたし…)
―――ヨル婆と王宮に入り、狂言花について調査しようとした矢先。
己たちの前に現れた鬼の仮面の男に…やられた。キバとヒナタ・赤丸と別れてから…どれほどの時間が経ったのだろうか。
「―――ここは…。」
「―――ここは王宮より少し離れた森の中です。…貴方はそこで倒れていたんですよ。」
「―――…そ…なんですか。」
女性の言葉に掌を見つめた私は微かな痺れが残る己の腕がゆっくりと開き閉まる動作に目を細めた。
(―――生きてる。)
あの男の術を受けたというのに、生きているのは何故なんだろうか。
その私の疑問は隣に座る女性の言葉に打ち消された。
「―――貴方の体にかけられた術は、私が消しました。」
女性の言葉に思わず起き上がった私は、鋭く痛み腹部を庇いながら椅子に腰かける女性を見つめた。
―――不鬼の一族。男が零したように、人のチャクラを制御できなくする術は文献にも見たことがない。だとしたらこの術は――特殊な血継限界の血を持つ人間しかできない筈なのに。
「―――…貴方は…何者ですか。」
「……」
私の問いに小首を傾げた女性は、私に笑みを浮かべながら言葉を零す。
「―――私の名は“ホタル”と言います。この土地で暮らしていたある一族の生き残りです。」
彼女の言葉に眉根を寄せた私はヨル婆が言った言葉を思い出していた。
最初に私たちが探し出した狂言花とは。
人間が持つ生命エネルギーを乱らせ、死に陥れる効果がある花だと聞いた。
そしてその禁忌と言われたその花を管理していた一族がいた。
―――彼らはこの国のトップによる思惑により、一族を滅ぼされたという。
「―――ま、待ってください。…確かその一族は…「ええ、皆。殺されたわ。」…!」
彼女の静かな言葉に目を見開いた私は視線を逸らした彼女の横顔を見つめた。
彼女の銀髪が光に反射し、優しく揺れる。
「―――今、生き残っているのは…私と。」
――――城の中にいるあの人だけだもん。
「―――あの人…?」
「ええ。…今、彼はこの国のトップ…【ヒルガン】という男の命の元、国の裏の仕事についている。
…貴方にかけられた術は私たち一族の特殊な術。本来あるべき己のチャクラを異物と体に刻み付ける厄介なもの。
現にあなたのチャクラはコントロールなんてできず、内部の臓器さえも壊し続けようといたでしょ。」
「―――え、そ…すね。…それをあなたが解いたの?」
「―――ええ。」
頷く女性の言葉に目を細めた私は彼女を見つめた。
―――一族の生き残り。
立ち入り区域と言われる森の中にすむ女性。
己を襲ってきた鬼の仮面の男。
「―――いったい…貴方たちに何があったんです?」
私の言葉に視線を向けた彼女は琥珀色の瞳を細めた。その憂を浮かべた表情は何故か切なそうで。
「―――私も貴方に話そうと思っていたんです。」
――――彼女が零したのは、一族で生き残った二人のこれまでの物語と。
誰も知らないこの国の闇だった。
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