全てが優しい世界に満ちて

□はじまり
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深い深い暗闇の中。

届いたのは、優しい誰かの声。



【―――世界の軸を通り抜けた小さな迷い子よ。

あなたの掌に零れるほどの、希望と絶望を与えましょう。


どちらかを手にするのは、貴方次第。】







夢の中、聞こえた声を最後に私の意識は一気に浮上した。






         00  はじまりの唄




頬に触れるのは、柔らかい風。
いつの間にか眠っていたらしい己の意識に驚きながらも、寝床として使っていた木々から起き上がった私は、肩まである茶髪を揺らしながら、視線を空に上げた。




「―――あ、」


空を飛ぶ忍鳥の存在に任務だと、気付いた私は木々から飛び降りた。
淡い紫色の着物タイプの忍服はテマリさんの着物タイプの忍服と酷く似ている。
だが、掌まで覆う袖の長さは己の師である彼女の忍服を真似ているからで。
空中をゆっくりと舞いながら移動していた私は、腕に結び付けたままの額当てを結び直した。



(―――また、日比谷と任務かなあ…)



同じ忍びという役割であり、尚且つ、前世の記憶があるということを偶然に知ったお互いが意気投合するのは早く。
他人を自然と気遣い、己にも優しくする彼女を友人として慕っているのが己の現状だ。



「―――もうすこしか…」




この世界の主人公である彼がこの里を立ち去って三年の月日が流れていた。



























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