全てが優しい世界に満ちて

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―――1年。365日。


時間とは一瞬に過ぎていく。
それは鮮やかに、それは余りにも呆気なく過ぎていくものだ。



ナルトの世界とは全く異なる世界。
それでも、日々の訓練を怠らず修行をしていた私は己の財産でもあるチャクラを時に学園生活で利用していた。




―――私が入った学園は、高校と大学をストレートに行ける場所だ。
勿論、都会にあるその場所は学力的にも技術的にもレベルが高かったが、それは気力で乗り切った。いや、乗り切るしか己には方法がなかったのだ。





―――そして、
何度も目の前に現れた山を乗り越え、この世界で生きていくと決めたあの日から7年の月日が経った。








―――――――――――






いつの間にか頬に触れていた風は鋭い寒さを持つものではなく心地よい温度になったらしい。肩まで伸びた茶髪を髪飾りでまとめ、黒色のコートを羽織りながら私は、7年振りに帰るあの場所へ足を向けていた。





(―――あ〜…眠いわ。ま、病院勤務も学校卒業とともに終わったから良かったわ。)



―――淀橋学園。高校から大学院まであるその学園に7年、私は自分が目指した看護師と言う資格をもう一度得ることと、知識を増やすためにその場所に入り込んだ。
そして、学生ながら看護師と言う職種を生かすため学園系列の病院で働いていたのだ。
そして、それは卒業と共に辞めることができて。
自由になった己の元に来たのは吉井夫婦からの一本の電話。





「―――急に帰ってこいって…。まあ、有り難いけどね…」




学生ながら忙しくて帰れなかった私の身体を心配し、仕送りを送ってくれた両親の愛情を受け止めながら生きてきた私が断ることなんてできなくて。





広がった視界に現れた古ぼけた診療所の看板に瞳を細めた私は小さく息を吐いた。




―――肌寒い空の下、震える自分の傍に黙って座って話しかけてくれた少年の顔が脳裏に浮かぶ。




「―――北村…ユウ…。」



診療所の隣に住んでいた彼の家はもうない。私と出会い、この土地を離れた私を見送って三年後、この家を売り払いどこかの大学にいってしまったらしい。







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