全てが優しい世界に満ちて

□04
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―――運命。

それは神に選ばれたものでもなく、与えられたものではないと私は思う。



―――運命とは。偶然の重なりあいで成り立っているものだと。



私、吉井エミは考えている。







04














「―――何で戻って来た。」



「ん〜…。二人が会いたいって言ったから戻って来ただけだよ。それより、貴方は?」


「―――は?」


「だって、家もないのにここに帰ってくるなんて思わないじゃん。」




―――7年越しの出会い。偶然にも出会った彼は私と同じく1日だけ家に泊まる気だったらしく。吉井夫婦と別れ、荷物を抱えながら帰る私を見送るためついてきた北村ユウの質問に答えていた私は後ろで歩く彼を振り返った。


「――――さあな。」



「―――む、何よ。気になるじゃん。」



まあ、いいけど。



そう言って笑った私は、前を向いて歩く。
あの時、心も体も傷ついた私を支えてくれた相手がいる。その感覚が酷く懐かしくて。




確実に近づいていてくる駅の正面。その場所についたと同時に、後ろで歩いていた気配が立ち止った。




「―――おい。」


「―――どうしたの?」



振り返り長めの茶髪を揺らした私は、後ろで立ち止まる男を振り返った。



「―――お前、これからどうするんだ?」


「ん―――。ひとまず、これから就職先に向かいます。んで、頑張ります。」


「―――就職…どこに勤めたんだ?」


「―――秘密。」




私の言葉に何故か寂しそうな色を一瞬だけ浮かべた北村の顔を見ていた私は、ゆっくりと言葉を紡いだ。




「―――なーに、しけた顔してるのよ。私はこれからも、私の道をつっきるけど。


たまには会いにくるから。」








だから、お互い頑張るわよ。




そう言って北村ユウを見た私の視界に入ったのは微笑んだ彼の笑顔。顔立ちが良い彼の美形スマイルを横目で見ながら小さく吐息を溢した私は瞳を細めた。

脳裏に蘇る肩に触れた温もり。


【ずっと、見ているから。】




「―――じゃあ、行ってくるね。」
 



そう言った私は駅のホームへと駆け出す。
身体に触れる微量な人々のチャクラを感じながら、時間が迫る電車へと足を向けた。





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