全てが優しい世界に満ちて

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「つくづく思うけど…さ。」
「へ?何?」
「---郁は生傷が多すぎるんだよ。同じ女子として心配になる。」


訓練後、足を軽く引きずっていた彼女に気付いたのは己だけで。彼女に尋ねた瞬間、足をくじいたと発言したのは部屋に戻ってから。
そんな彼女の強がりに思わず息がこぼれそうになったが、訓練服から部屋着に着替えた彼女の足元を見つめた私は足首に触れた。


(---少し、筋が伸び切ったかもね…。…ひとまず、冷やしてもらうしかないなあ。)


指先にゆっくりと己のチャクラを集中させる。彼女の身体に触れた己のチャクラを緊張している筋肉に流した。


「---痛…ッ」
「うん。ごめんごめん。後は冷やしたら良いからね。」



訓練服に身をつつんだままの己が今所持しているのは関節を固定するテーピングで。それを足首に巻いた私は、部屋に置いていた湿布を患部に貼付する。




「---エミって、看護師なんだよね。」
「へ、あ、うん。そうだけど…」
「---何で、図書隊に入ったの?病院で働くのは嫌だったの?」
「……えっと…」



―――二つの組織がどのような道を歩いていくのか気になったから。
それが第一の理由だったが、彼女に正直に話してもいいだろうか。



―――昔、忍びであった自分。
この世界で生きていくために、医療界という世界の知識を再び学びなおした。
その中で、異なる世界に来た自分の能力を生かすことができるのは、不利な状況でも戦うこの図書隊であったと思った。
その判断が間違っていたかなんてわからぬけども。




「----守りたかったからかな。」



図書館は資料収集の自由を有する。
図書館は資料提供の自由を有する。
図書館は利用者の秘密を守る。
図書館はすべての不当な検閲に反対する。
図書館の自由が侵される時、我々は団結して、あくまで自由を守る。



この図書隊で掲げる宣言は、本を守り、人々の想いを守る強い決意を己は感じた。
昔の自分がいた世界にあった仲間と里の皆を守る忍びたちの強い火の意思のような感じがしたのだ。










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